2016年6月8日(水)
アベノミクスで税収増えた?
実は消費税増税で水増し
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安倍晋三首相が経済政策「アベノミクス」の「果実」の一つとして誇示しているのが、税収増です。「この3年半のアベノミクスによって、国、地方を合わせた税収は21兆円増加した」と述べています。しかし首相の言い分をうのみにすることはできません。
財務省と総務省によれば、「税収の21兆円増加」とは、2016年度の当初予算の税収見込み額を、安倍政権発足以前の12年度の額と比べた数字です。
この間に、国の税収は42兆3千億円から57兆6千億円へ15兆3千億円増加。地方の税収は36兆4千億円から41兆9千億円へ5兆5千億円増加。合わせて20兆8千億円増えたというのです。
問題は、この税収増を経済政策の“成功の果実”だといえるのかどうかです。
国・地方9兆円
まず、「21兆円」には安倍政権が14年4月に実施した8%への消費税率引き上げによる税収増が含まれています。消費税収は国と地方を合わせて実に9兆円も増えました。
自分で消費税率を引き上げておいて、その分の税収増まで経済政策の「果実」として扱っているのです。水増し以外の何ものでもありません。
「アベノミクス」の財政出動政策は財源を消費税増税に頼っています。その意味では、消費税増税はまさに「アベノミクス」の一環です。しかし、消費税増税による税収増は国民にとって喜べることでしょうか。
国と地方の消費税収が9兆円増えたということは、国民の所得が9兆円奪われたことを意味します。とりわけ重い負担がのしかかるのは低所得者です。
消費税増税は貧困を深刻化し、個人消費を2年連続で落ち込ませました。14年度の国内総生産(GDP)はマイナス成長に陥り、15年度も政府見通しを下回りました。9兆円の消費税収増は“成功の果実”であるどころか、むしろ“失敗の種”だといえます。
異常事態と比較
第二に、安倍首相が現在との比較で持ち出した12年度の税収とは、リーマン・ショック(08年)後の世界的な経済危機と東日本大震災(11年)の影響で激しく落ち込んだ異常事態のときのものです。
赤字の企業が多かった12年度は、法人税収が07年度と比べて7兆6千億円も減っていました。トヨタ自動車は08〜12年度までの5年間、法人税(国税分)を1円も払っていませんでした。
リーマン・ショック前の07年度の税収見込みは、国と地方を合わせて95兆3千億円でした。これに対し、安倍首相が誇る16年度の税収見込みは99兆5千億円です。消費税の増収分9兆円を除けば、リーマン・ショック前の水準すら回復していないのです。法人税収は07年度に16兆4千億円あったのに、16年度は12兆2千億円にとどまっています。
水増し数字の独り歩きで「アベノミクス」の「果実」を印象付けようとしても、国民の生活実感からかけ離れるだけです。
(杉本恒如)