2016年6月7日(火)
「1億総活躍プラン」 子ども医療費助成
自治体に罰則 見直し先送り
共産党、国の制度確立を提案
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安倍内閣の「1億総活躍プラン」では、焦点となっていた子どもの医療費助成で、自治体への罰則(国民健康保険に対する国庫負担の減額調整措置)について「見直しを含め検討し、年末までに結論を出す」との表現にとどまりました。参院選で、全国に広がる医療費助成に背を向ける安倍政権の姿勢が厳しく問われます。
財界巻き返し
国民の世論と運動ですべての自治体が独自に子ども医療費の無料化や軽減策を行っています。しかし、国の制度としては実現していません。それどころか国は、無料化を実施している自治体に「罰則」まで科して抑え込もうとしてきました。
貧困と格差が大問題となるなか、お金の心配なく、子どもが医療機関にかかれるようにすることは急務です。
全国知事会などは「減額措置は直ちに廃止し、国の責任で全国一律の制度を構築すべきだ」と要求。これに押されて塩崎恭久厚労相も「罰則」について「子育て支援との兼ね合いでどうしていくか決めていかねばならない」(3月18日)と見直しを検討する発言を繰り返し、春ごろに結論を出す考えを表明。厚労省の検討会も同22日、「早急に見直す」とした報告書をとりまとめました。
しかし、「1億総活躍プラン」では結局、年末までに結論を先送りしてしまいました。就学前まで国の制度として無料化するなど医療費助成の拡充は一言の言及もありません。その背景には、財務省や経団連などの巻き返しがありました。
財務省は4月4日の財政制度等審議会で、社会保障の伸びを3年で1・5兆円に抑制する経済・財政再生計画の実行を要求。5月26日に開かれた厚労省の審議会では、経団連などが「コスト意識を持ってもらうために自己負担が必要」として、助成の拡充や「罰則」見直しにも反対する考えを主張しました。
波及増はゼロ
“無料化にすれば医療費が増える”という主張は、厚労省自身が就学前まで無料にしても「波及増はゼロ」だと否定しています。すでに多くの自治体で無料になっているので医療費が増えることはないからです。無料化によって早期発見・受診が進んだことで重症化を防ぎ、医療費抑制効果が出ているとの指摘もあります。
前出の審議会でも日本医師会が「過剰な診療ではなく、助けなければならない人を助けている」と反論。自治体からは「全国一律の制度にすべきだ。少子化対策にもなる」との指摘が相次ぎました。
日本共産党は、小学校就学前の医療費を所得制限なしで無料にする国の制度を確立し、自治体への「罰則」も廃止すべきだと主張。その共通の制度の上に、自治体独自の助成をさらに前進させることを提案しています。(深山直人)