2016年6月6日(月)
政治考 衆参ダブル選見送り
野党共闘の前進を警戒
安倍首相「こんなに早くとは」
「衆院選で良い結果が望めない。現在の3分の2超の議席を割り込み、悪くすれば30〜40減らし政権運営が苦しくなる危険がある」。自民党関係者の一人は、安倍晋三首相が狙ってきた衆参ダブル選「見送り」の「一番大きな理由」をこう語ります。
「4月の衆院北海道5区補選でもわかったが、民共共闘は手ごわい。ダブルにすれば“参院選に相乗効果がある”というが、本当か。共闘が1人区全てに広がった。慎重にならざるを得ない」
“相乗効果”について自民党ベテラン議員は、「衆院が中選挙区時代なら、それぞれの自民候補が競い合う結果として、全体として自民党が盛り上がることもあった。しかし、1選挙区1人当選という小選挙区では、党首の人気や政権公約の争いとなり、党派間闘争になる。“野党共闘対自公”という対決構図になると、雪崩を打って押し込まれる、逆効果の危険がある」と述べます。派閥の領袖クラスから同様の意見が出ていると指摘します。
改憲狙って
ダブル選の狙いについて自民党関係者の一人は、「もともと昨年末の情勢調査で『いま』行えば圧勝といわれ、改憲を狙って本格化した戦略だ」と指摘。それが、相次ぐ閣僚疑惑や議員不祥事、経済の停滞などにより、この半年で戦略環境は変わったとし、「特に野党共闘が進んだことが最も大きな変化だ」と述べます。
野党共闘について安倍首相本人も「こんなに早く進むとは思わなかった」ともらしている、と伝えられています。野党共闘の前進を前にダブル選回避に追い詰められたのです。
自民党中堅幹部の一人は、首相官邸や党は、頻繁に情勢調査をやってきたと指摘しつつ、「これらの数字には野党共闘の影響が十分反映されていない。実際に選挙になれば、がらりと変わる。特に首都圏は甘くない」と警戒します。衆院北海道5区補選は、当初「楽勝」と見られていた自民党候補が大苦戦し、野党統一候補が無党派層の7割強の支持を集めました。
合意を深化
「平和安全法制により日米同盟はより強くなったのに、共産党と共にこれを根底から覆そうとしているのが民進党だ」。安倍首相は国会閉会に当たっての自民党代議士会(1日)で声を張り上げました。遊説スタートとなった福島県郡山市での街頭演説(3日)でも、安保法制を廃止しようとしているのが「民進党であり共産党だ」と攻撃しました。
安倍政権と自公両党は、参院選に解散をぶつけ「政権選択」を重ねるダブル選が「最も有効な野党分断の方法とみてきた」(自民党関係者)といいます。
こうした“ダブル選圧力”のもと、逆に4野党は衆院選挙での協力や共通政策の構築をすすめ、共闘関係を深めてきました。市民の強い後押しを受け、何より大義に立った共闘だからです。
国会最終盤の4野党党首会談(5月19日)で、ダブル選の可能性に備え「衆院選についてできるかぎりの協力」をすると確認し、「具体化を加速」させると合意。来年4月からの消費税10%への引き上げ反対で一致点をつくり、「その他の共通政策について一致点を確認し、積み重ねていく」と合意を深化させました。
会期末前日の5月31日の4野党の書記局長・幹事長会談では、「共通政策」の柱立てで合意が実現し、豊富な政策内容を持つ共闘関係に発展させます。党首や書記局長・幹事長レベルの共同街頭宣伝も次々と実現しています。
参院選投票日まで1カ月あまり。ダブル選回避へ安倍政権を追い詰めた4野党プラス市民の共闘は、勝利へ向けたたたかいを加速させています。
(中祖寅一)