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2016年6月6日(月)

主張

防衛省の研究助成

大学を軍事の下請けにするな

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 安倍晋三政権が、大学を軍事研究の下請けにする動きを急速に強めています。平和憲法のもとで軍事研究を拒否し、学問の自由を守ってきた日本の大学の存立にかかわる重大問題です。

学術の本質を損なう危険

 防衛省は、大学などに研究を委託し資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を2015年度から導入し、16年度予算で6億円に倍増しました。装備品(兵器)に適用できる「独創的な研究を発掘する」ためとしています。自民党は、自衛隊の「技術的優越」がなければ「勝利を収めることはできない」として、同制度を100億円に拡充することや、内閣府が14年から導入した「革新的研究開発推進プログラム」(基金額550億円)を、「安全保障にも資する研究」にさらに投入することなどを首相に提言しました。

 大学は、基盤的経費が最近10年間で大幅に削減され、研究者が自由に使える研究費が底をつくような危機的事態に追い込まれています。軍事研究のために研究者のほおを札束でたたくようなやり方に、「研究者版経済的徴兵制」という批判もでています。

 見過ごせないのは、日本の科学者を代表する機関である日本学術会議の大西隆会長が「私見」として「個別的自衛権のための基礎研究なら許容される」と発言したことです。これにたいし会員から「学術の本質が損なわれかねない」との批判など、さまざまな意見がだされ、学術会議内に「安全保障と学術に関する検討委員会」が設置されました。

 日本学術会議は、科学者が侵略戦争に協力した戦前への反省の上に、1950年と67年の2度にわたり「戦争を目的とする研究には従わない」声明を採択しました。この声明こそ、多くの大学が軍事研究を拒否する土台となっています。最近も広島大や新潟大、琉球大などが、「学問は平和のため」として防衛省の研究助成に応募しないことを確認しています。学術会議が大西会長の私見を追認し、これまでの声明の立場を事実上骨抜きにするようなことになれば、科学者を戦争国家の“しもべ”へと誘導することになり、学術界の自殺行為と言わなければなりません。

 防衛省は、デュアルユース(民生にも軍事にも利用可能な)技術だから民生分野でも活用されることを強調しています。しかし、スポンサーとして研究成果を活用するのは防衛省であり、その目的が軍事であることは明瞭です。実際、防衛省が研究助成で公募する20のテーマは、いずれも兵器開発に直結する研究です。例えば、「水中移動の抵抗軽減」や「音響・可視光以外の手法による水中通信」は、潜水艦の性能を高度化することに使われるものです。

 「自衛のためだから」と軍事研究を容認すれば、核兵器の保有も憲法上問題ないとする安倍政権のもとで、核兵器研究まで許されることになりかねません。

国民の良識でストップを

 科学は平和と人類福祉に貢献することを使命とし、そのために「学問の自由」が保障されるべきだというのが、戦後の学術界の原点であり、日本国憲法の精神です。

 大学を軍事研究の下請けに変質させ、「学問の自由」を踏みにじる安倍政権の暴走に、国民の良識でストップをかけるときです。


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