2016年6月4日(土)
主張
米軍「綱紀粛正」策
沖縄蔑視では犯罪なくならぬ
元米海兵隊員の軍属による「女性遺体遺棄事件」を受け、在沖縄米軍が「哀悼」期間(先月27日から30日間)に入っています。米兵に加え軍属らを対象に深夜の外出制限、基地外での飲酒禁止など「綱紀粛正」策が実施されていますが、過去幾度となく行われてきたものとほとんど変わりません。翁長雄志沖縄県知事は在沖縄米軍トップのニコルソン4軍調整官に直接、今回の「綱紀粛正」策の実効性に疑問を示しています。さらに、海兵隊が沖縄着任の兵士に県民蔑視の研修をしていたことまで明らかになっています。事件の「再発防止」とは程遠いのが実態です。
県民を誹謗中傷する研修
「県民は戦後何十年間、何百回も抗議してきた。(犯罪の)再発防止につながるか、県民は残念ながらうつろな気持ちで聞いている」―。翁長知事はニコルソン4軍調整官に対し、今回の「綱紀粛正」策について県民がむなしさを感じていることを率直に指摘しました(先月28日の電話会談)。
米軍の「綱紀粛正」策に何ら実効性がないことは、これまでの米軍の事件・事故をめぐる沖縄の歴史で証明済みです。しかも、わずか30日間の実施期間が終われば深夜外出も飲酒も野放しです。
加えて、今回の「綱紀粛正」策が発表される直前、在沖縄海兵隊が沖縄着任の兵士らに県民を蔑視する研修を行っていたことが判明し、米軍への怒り、不信はますます高まっています。
問題の研修の内容を明らかにしたのは、「沖縄文化認識トレーニング」と題した研修用のスライド資料(在沖縄海兵隊作成)です。イギリス人ジャーナリストが米国の情報公開請求で入手しました。
資料には、沖縄県民の世論について「論理的というより感情的。二重基準。多分に『責任転嫁』」と侮蔑の言葉が並んでいます。
「県民は一般的に限られた情報しか持っておらず、情報を得るための努力をしない」と見下し、沖縄の地元紙について「内向きで視野が狭く、反軍事のプロパガンダ(宣伝)を推進している」「反軍事の目標を持つメディアによって増幅された特定の出来事が世論のバランスを大きく変え得る」と中傷を繰り返しています。
沖縄の政治についても「米軍基地問題を多くの地方政治・国政の問題に関する『てこ』として利用している。主として中央政府からますます多くの補助金を受け取るためだ」と誹(ひ)謗(ぼう)しています。さらに「多くの沖縄県民にとって、軍用地料が唯一の収入源で、彼らは基地の返還を望んでいない」と事実無根の記述まであります。
まさに「上から目線の最たるもの」(翁長知事)であり、海兵隊内に今なお占領者意識がはびこっていることを示しています。
基地撤去こそが最も有効
いくら「綱紀粛正」「再発防止」と繰り返してみても、沖縄県民蔑視の「教育」を行っていれば、犯罪がなくなるはずがありません。
翁長知事はニコルソン4軍調整官に「根本的な問題は国土面積の0・6%の沖縄に74%の在日米軍専用施設があることだ。負担軽減は日米地位協定の見直しを含めた議論でなければならない」と強調しました。基地の大幅縮小・撤去と、米軍に特権を保障する日米地位協定の改定こそ、最も有効な「再発防止」策に他なりません。