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2016年6月3日(金)

主張

消費税増税先送り

失政認めぬ首相 国民に語れぬ

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 「アベノミクス」(安倍晋三政権の経済政策)はうまくいっている、リーマン・ショックや大震災のような事態も起きていない、しかし世界経済の「リスク」が心配だから、「新しい判断」で増税は延期する―。安倍首相の記者会見で納得できた国民はまずいません。自らの失政を認めない首相がつい1週間前の伊勢志摩サミットでいったという、「リーマン前に似てきた」という説明もひっこめました。安倍首相は増税先送りの理由さえ国民に説明できません。政権担当能力を失った安倍政権の「アベノミクス」と消費税増税路線への参院選での審判がいよいよ重要です。

言い訳と保身ばかりで

 安倍政権が何が何でもやるといっていた来年4月からの消費税率の8%から10%への再引き上げを延期せざるを得なくなった最大の理由は、3年半にわたる「アベノミクス」でもいっこうに景気が良くならず、特に一昨年4月に消費税の税率を5%から8%に引き上げた結果、消費の落ち込みが予想以上に長引いているためなのは明らかです。勤労者の実質賃金は2015年度まで5年連続のマイナスです。国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費は消費税増税後の14、15年度と2年連続マイナスです。首相も「予想外」の落ち込みと認めざるを得ません。

 安倍首相は有効求人倍率が全都道府県で1を超え、求人が求職を上回ったなど都合の良い数字だけを並べて成果を宣伝しますが、有効求人倍率には希望する仕事が見つからず、求職をあきらめた人が増えている影響もあります。首相は国民の暮らしを直視し、失政の責任を明確にすべきです。

 一昨年秋、消費税増税を1年半延期し総選挙に乗り出した時、安倍首相は必ず増税できる経済状況をつくると大見えを切り、増税法案から景気判断条項も削除して、「リーマン・ショックや大震災でも起きない限り」増税すると主張しました。それから1年半余りで再び消費税増税を延期せざるを得なくなった理由を、首相は「新しい判断」などとごまかさず国民に納得できるよう説明すべきです。

 首相は伊勢志摩サミットで突然世界経済は「リーマン前に似てきた」と言い出しました。ところがそれが国内の失政を世界経済に責任転嫁するものだと評判が悪く、参加した首脳からも認識が違うと指摘されると、説明した世耕弘成官房副長官の間違いだったと取り消して、「リーマン・ショックは起きていない」と説明を変えたのです。それでいて世界経済の「リスク」が高まっているから「新しい判断」で増税は延期するというのですから説明は支離滅裂です。安倍首相の説明には、責任転嫁と言い訳、自らの保身しかありません。

加速すれば矛盾は激化

 安倍首相は世界経済の「リスク」に対処するため、「新しい判断」で消費税の増税を延期するとともに、「アベノミクス」を加速して、この秋には大胆な経済対策を実行するといいます。しかし、大企業のもうけを増やすだけの「アベノミクス」を加速しても、国民の暮らしが良くなり、消費が回復する見通しは出てきません。貧困と格差を拡大する「アベノミクス」の加速ではなく、転換こそが必要です。

 消費税増税は断念すべきです。「アベノミクス」と増税路線への審判は、参院選の大争点です。


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