2016年6月3日(金)
きょうの潮流
日本は四季ではなく五季の国だという人がいます。何年か前に気象情報の会社が調査したところ、ほとんどの日本人が梅雨を一つの季節と感じていました▼春から夏に移り変わる時期。6月は天気同様、どこかあいまいな印象を受けます。近所に咲くアジサイも単色ではなく、青から赤への階層が目を楽しませてくれます。まさに別名の七変化。さまざまな色の花が仲良く群生します▼境目のない季節の移ろい。多彩な生きものが共生する自然の営み。それをみるにつけ、いまだに憎悪と差別がはびこる人間社会のなんと愚かなことか。日本で広まったヘイトスピーチも、その一例です▼「反日を許すな」「日本を浄化する」。在日コリアンが多く住む街でくり返される差別扇動。ゴキブリ呼ばわりされ、死ねと脅される。言葉の暴力による被害は魂の殺人におよび、自死に追いつめられることも。長く日本で暮らす在日1世は「人生を丸ごと否定された。いつ襲われるかと思うと、夜も眠れない」▼被害の深刻さと差別の根絶を求める声に押され、日本にもようやくヘイトスピーチ対策法が先の国会で成立しました。課題は残ったものの、差別扇動をなくす立場の法の存在は関係者を勇気づけています▼差別主義者たちは5日にも川崎で再びヘイトスピーチデモを企てています。法の後押しもあり、同市は公園のヘイト集会を不許可に。多文化共生社会を掲げるこの街は差別根絶の最前線。一人ひとりの人権を尊重し、共に生きるためのたたかいです。