2016年5月31日(火)
増税延期で与党調整
失政隠し党略優先
自民幹事長「引くも地獄」
安倍晋三首相による国会会期末の増税再延期の意向伝達を受け、政権与党内に「亀裂」「対立」が生じているとも報じられています。
無責任な対応
29日には麻生太郎副総理・財務相が「われわれは(2014年11月に)1年半後に引き上げるとはっきりいって選挙に当選したのだから、延ばすならもう1回選挙して信を問わなければ筋が通らない」「私や谷垣さんの言い分だ」と発言。これを受け、自民党の谷垣禎一幹事長は「(消費税増税は)進むも地獄、引くも地獄という世界だ。どちらにしても相当な覚悟がいる」と述べました(いずれも富山市内)。30日には稲田朋美政調会長も再延期なら解散だと主張しました。
しかし、麻生、谷垣両氏の発言について自民党中堅議員は、「言っていることは『筋論』だが、総理の専権である(衆院)解散について、副総理や幹事長が軽く口走りすぎだ。財務省の立場に配慮しているのだろうが、軽薄な演出で、この人たちが本心から増税延期に反対なのかもわからない」と話します。
安倍首相は、自ら狙ってきた解散・衆参ダブル選を同僚に語らせ、様子をうかがう、無責任で中途半端な対応です。
また別の議員は「民進党が来年4月の増税に反対に踏み切ったのは想定外。争点打ち消しのため、参院選挙前に増税先送り判断をせざるを得なくなった」とのべ、参院選で「増税」対「反増税」の対決構図となることを避けた再延期の党略性を告白します。
与党に緊張も
2年半の再延期(19年10月)という期間の設定についても、18年9月の安倍首相の自民党総裁任期、同年12月の衆院議員任期、19年7月の参院選挙後に増税が行われることになります。選挙への影響を避ける「争点回避の意図がミエミエ過ぎる」という声が党内から出ます。
長期政権を目指す安倍首相は、増税路線そのものの破綻・アベノミクスの破綻を粉飾する一方で、党略的な増税再延期で参院選挙を有利に「乗り切る」姑息(こそく)な意図があるのは明白です。内閣不信任が突きつけられるほどの暴走を重ね、野党共闘が劇的に広がる中での選挙となります。
谷垣氏が「行くも地獄。引くも地獄」と語るように、「選挙は甘くない」(中堅幹部)と政権与党には緊張も走っています。(中祖寅一)