2016年5月31日(火)
きょうの潮流
権力批判をしてきた米映画監督マイケル・ムーアが、今度は米国防総省の密命を受け、自国に最も必要なものを“略奪”するために、自ら“侵略者”となって世界に飛び立った―。こんなブラックユーモアで映画は始まります。公開中のドキュメンタリー「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」です▼最初に訪ねたのはイタリア。有給休暇8週間と聞き、「アメリカの有給休暇はゼロだ!」と。スロベニアでは、自国の学生だけでなく留学生の学費まで無料、ドイツは週36時間労働、フランスの小学校給食はフレンチのフルコース…▼14時に退社し、“アフター2”を楽しむドイツ人労働者の姿に、人間の自由で全面的な発達は、労働時間の短縮でこそ可能と実感しました。翻って日本はどうか。「1日8時間、週40時間労働」は絵に描いた餅。週60時間以上働く労働者の割合は、4割近くにのぼります▼映画では、労働時間の短縮が、たたかって勝ち取られたことも示されます。学費無料など略奪した“戦利品”は、ほとんどがアメリカ発のアイデアだったことも▼監督が、本紙日曜版29日号の電話インタビューで日本人に呼びかけています。“幸福とは人間を人間的に扱う社会から生まれる”“これを見て「私たちは働きすぎだ。人生を享受しなければ」と思い、欧州の優れた政策に学んでもらいたい”と▼経済にデモクラシーを。日本でもルールある経済社会を求める声が広がっています。今夏の選挙はブラックな働き方を変える絶好の機会です。