2016年5月31日(火)
主張
「もんじゅ」廃炉
これ以上遅らせる理由はない
安全に運転できる資質がないと、新たな運営主体を示すよう勧告を受けていた日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」について、文部科学省の検討会が報告書をまとめました。新たな運営主体は示すことができませんでした。安倍晋三政権と文科省はあくまでも「もんじゅ」の存続を前提にしていますが、新しい運営主体が見つからなければ存続することは困難です。「もんじゅ」はすでに20年以上も運転を停止したままで、「核燃料サイクル」実現の見通しも立たず、運営主体も見つからないなら、「もんじゅ」廃炉をこれ以上遅らせる理由はありません。
新たな運営主体示せず
「もんじゅ」は普通の原子力発電所と違い、ウランを燃料にする原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを燃料に発電する仕組みの高速増殖炉(原型炉)です。その使用済み燃料にはさらに多量のプルトニウムが含まれるので「夢の原子炉」だとまで宣伝されました。しかし、プルトニウムは原爆の材料にもなる危険な物質で取り扱いが難しく、冷却材に水が触れれば大爆発するナトリウムを使うこともあって、世界でも成功した例はなく、開発を見直す国が相次いでいます。
「もんじゅ」も20年以上前に完成し、本格的に運転を始める臨界に達した直後の1995年、ナトリウムが漏れ出す大事故を起こし、運転を停止しました。その後も運転を再開しようとした際、炉内に3・3トンもの機器が落下する大事故を起こし、運転が停止している間に老朽化した部品の点検漏れなども発覚して、結局ほとんどの期間運転できないままです。運転できなくても年間200億円近くの予算がかかるなど、廃炉を求める声が高まるのは当然です。
こうした現状が無視できなくなった原子力規制委員会は昨年11月、日本原子力研究開発機構には「もんじゅ」を安全に運転する資質はないとして、新たな運営主体を半年以内に示すか、運営主体が見つからない場合はリスクを明確に減少させるよう「もんじゅ」の在り方を抜本的に見直すよう求めました。文科省はこの勧告を受けて半年がかりで検討してきたのに、新たな運営主体を示すことができなかったのです。廃炉を含め、「もんじゅ」の在り方を抜本的に見直すのは逃れようがありません。
文科省の報告書は、外部の専門家が入った経営協議会の設置など、運営主体に必要な条件を並べますが、この程度で「もんじゅ」が安全に運転できる保証にはなりません。勧告を突きつけた当の原子力規制委が、「もんじゅの安全とは何なのかの議論がされていない」と厳しく非難しています。「もんじゅ」の在り方そのものについての議論抜きで、存続を前提にした時間稼ぎはもはや許されません。
「核燃料サイクル」中止を
もともと「もんじゅ」の開発は、原発の使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを高速増殖炉で燃やし、循環させていくという「核燃料サイクル」が前提です。「もんじゅ」だけでなく、青森・六ケ所村の再処理工場も稼働の見通しが立たないため、使用済み核燃料がたまり続ける一方です。
「もんじゅ」を廃止するとともに、「核燃料サイクル」を断念し、原発からの脱却に踏み出すことがいよいよ求められます。