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2016年5月29日(日)

再批判 自民党改憲案(14)

「排除」されるべき“案”

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 日本国憲法前文の第1文は、(1)国民主権と代表民主制(2)自由主義・人権尊重主義(3)政府による戦争の阻止・平和主義を宣言しています。主語は「日本国民」であり、国民が憲法をつくりだすことを明らかにしています。

 リンカーン米大統領のゲティスバーグ演説で有名な「人民の、人民による、人民のための政治」の一節の趣旨も盛り込まれ、民主政治の充実が立憲主義の重要な内容であることが示唆されます。

「改正」には限界

 これらの日本国憲法の基本原理を「人類普遍の原理」と宣言し、「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」とされています。

 憲法の基本原理に反する法令や詔勅が排除されるのは憲法の「最高法規」性(98条)のあらわれです。

 憲法の基本原理に反する「憲法」を「排除する」とはどういうことか。憲法は「改正」手続きを定めています(96条)。しかし、憲法の基本原理を無視する「改正」は許さないとしているのです。

 厳格な改憲手続きで憲法の最高法規性を担保したうえに、その厳格な手続きを踏んだとしても「改正」には限界がある―。「個人の尊厳」を中核に、人権尊重と国民主権、徹底した平和主義の諸原理を「改正の限界」と宣言しているのです。「憲法制定の根本目的が改正権限を制限する」とも説明されます。

 立憲主義の構想は、二重三重に個人の尊厳と自由を守る、人類の深い知恵を含んでいます。

基本原理を否定

 これに対し自民党改憲案は、「個人」とその尊厳という立憲主義の根本を消し去り、天皇中心の国家の継承を強調。天賦人権思想を排除し「公の秩序」優先で人権を制約します。平和主義の核心である戦力不保持規定(9条2項)を削除し、無制限の武力行使を可能にします。さらに生存権保障のための大企業への規制は否定し、地方自治も破壊する―。日本国憲法の基本原理を乱暴にじゅうりんする内容です。

 自民党改憲案はまさに日本国憲法を否定するもので、「排除」されるべき“憲法”です。その根源には、日米同盟強化、大企業の利益最優先の新自由主義、過去の侵略戦争を正当化する歴史修正の流れがあります。

 改憲案に示される自民党の「世界観」は歴史の逆流そのもの。自民党が、もはや立憲・民主政治を担う資格を持たないことは明らかです。主権者・国民が力を広範に結集して、自民党に退場を迫るときです。(おわり)

 (この連載は中祖寅一が担当しました)


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