2016年5月28日(土)
もんじゅ 存続前提
文科省の検討会報告 運営主体検討へ
日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、文部科学省の検討会(座長=有馬朗人元科学技術庁長官)は27日、もんじゅの継続を前提として、新たな運営主体について外部専門家の経営への参画などの要件を列挙した報告書をまとめ、馳浩文科相に手渡しました。報告書を受け文科省が、具体的な運営主体を検討します。
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原子力規制委員会は昨年11月、約1万件の機器点検漏れなど安全管理上の問題が相次いだもんじゅについて、原子力機構に代わる新たな運営主体を示すよう馳文科相に勧告。文科省は、有識者による検討会を設置し、9回にわたって検討を進めてきました。
報告書は、もんじゅの在り方を見直すことには踏み込んでいません。わが国でナトリウム取り扱い技術やプルトニウム取り扱い技術を有するのは原子力機構だけとも指摘。新たな組織形態として特殊会社、特殊法人、認可法人などを挙げ、経営には、構成員の半数以上を目安に原子力以外の外部専門家が入ることなどを求めています。
規制委の田中俊一委員長は25日の定例会見で「勧告の要件に沿った議論がされているようには思えない」と述べています。
問題の先送り
原発問題住民運動福井県連絡会の林広員事務局長の話 原子力規制委員会ですら、「もんじゅ」をこのままにしてはいけないと勧告したにもかかわらず、検討会は「存続ありき」で議論が進められました。国民の税金を注ぎ込んで、これからも続けようということが明らかで、問題が先送りにされているだけです。
空気中の水蒸気とも反応するナトリウムを使う老朽化したもんじゅをこれからも存続させようとするのは危険極まりなく、廃炉を早く決断すべきです。全国の皆さんと手を携えて世論を高めていきたい。
相次ぐ事故・ミス 安全運転は不可能
昨年11月に原子力規制委員会が馳浩文部科学相へ出した勧告は、主に二つの柱からなります。一つは、日本原子力研究開発機構は「もんじゅ」の運転を安全に行う資質がないとして、半年をめどに運転を安全におこなえる能力をもつ者を具体的に示すこと。二つ目が、見つからない場合、リスクを明確に減少させるようもんじゅの在り方を抜本的に見直すことです。
しかし、文科省の設置した有識者検討会は、抜本的見直しをすることなくもんじゅを「核燃料サイクル政策の重要な取り組み」(有馬座長)だとして、存続前提で議論を進めてきました。
今回の報告書では、新たな運営主体の要件として、原子力以外の分野の外部専門家の経営への参画をあげていますが、原子力機構の技術を確実に継承するとしており、中身は原子力機構のもんじゅ関連部門が中心になると予想されます。これでは、看板を掛け替えただけとの批判は免れません。
もんじゅは旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃)によって建設されました。1995年にナトリウム漏れ・火災事故を起こすなどして運転を14年以上停止。この間、動燃は、核燃料サイクル開発機構に改組、さらに日本原子力研究所と合併し、現在の原子力機構となりました。2010年に運転を再開したものの、すぐに炉内に3・3トンもある機器を落下させ、その後運転を再開できないままとなっています。
何度も看板を掛け替えながら、もんじゅは、事故、トラブルや管理ミスを繰り返してきたのです。また、すでに老朽化も懸念されています。
これらから冷静に判断すれば、勧告の求めるような、もんじゅの運転を安全におこなえる能力をもつ者などありません。1兆円以上の税金を投入してきたもんじゅ。廃炉を決断すべきです。
(松沼環)