2016年5月28日(土)
G7政治外交限界露呈
議題に核軍縮なし
南シナ海 軍事行動否定せず
G7首脳らが議論した伊勢志摩サミット。安倍晋三首相は会合後の議長記者会見で、「世界の平和と安全を守る。このことも普遍的な価値を共有する私たちG7の大きな役割だ」と強調しました。
サミットでは政治・外交のテーマとして、テロ対策、難民問題、海洋安全保障、ウクライナ、シリア、北朝鮮などの地域情勢について議論されました。しかし、こうした問題に大きな影響力をもつロシアや中国が参加しておらずサミットの限界も垣間見えました。
テロ対策無反省
首脳宣言に加え発出された「テロおよび暴力的過激主義対策に関するG7行動計画」では、国際社会によるテロ対策がうまくいっていない現状を認め、改めてG7が「国際社会によるテロへのより実効的な対処を容易にするための特定の重大なギャップに焦点をあてる」と明言しました。
しかし、テロに対する軍事行動を含め、これまでの対策がなぜうまくいっていないかの反省はなく、国際社会がこれまで取り組んできた対策の枠を出るものではありません。
首脳宣言は、中国が進める南シナ海での一方的な現状変更などについて「懸念し、紛争の平和的管理及び解決の根本的な重要性を強調する」としました。
しかし現在も、米国は南シナ海で米艦船などを航行させる「航行の自由」作戦を継続し、日本の自衛隊も共同訓練を繰り返しています。
記者会見で安倍氏は現状変更の試みを止めるためにG7がどう取り組むのかと問われ、こうした軍事行動を否定しませんでした。
核兵器のない世界をどう実現するか―オバマ大統領の広島訪問を前に、G7首脳会合が何を打ち出すかも問われました。
記者会見で安倍氏は、「核兵器のない世界をめざす、核不拡散と軍縮に向けたG7の強い決意を改めて確認した」と述べました。
しかし、政治・外交問題を話し合った会合では、核軍縮は議題にも上がりませんでした。サミット当局者は、「議題の選択は首脳に任されている」と説明。議長である安倍首相が議題として取り上げなかったことは明らかです。
具体策示さない
首脳宣言も「不拡散・軍縮」という項目で「核兵器のない世界に向けた環境を醸成する」と改めて表明しただけで、核軍縮に具体策は示しませんでした。
宣言は4月の外相会合が採択した「広島宣言」を承認するとしましたが、それは「核兵器のない世界」が「漸進的なアプローチをとることのみにより達成できる」と強調したもの。核兵器廃絶を永遠の彼方に追いやるものです。
核軍縮をめぐっては国連で、今や約140カ国が核兵器禁止条約の交渉開始を支持しています。ここにこそ展望があります。
(山崎伸治、山田英明)