2016年5月27日(金)
主張
安倍・オバマ会談
沖縄の怒りがまだ分からぬか
伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)開幕前に安倍晋三首相とオバマ米大統領による日米首脳会談が開かれました。最大の焦点は、沖縄で起きた米軍属で元海兵隊員による「女性遺体遺棄事件」でした。首相は大統領に「実効的な再発防止策など厳正な対応」を求めました。しかし、首脳会談前に翁長雄志沖縄県知事が求めていた日米地位協定の改定や、米軍基地の大幅縮小などについて、首相は全く言及しませんでした。さらに名護市辺野古の米軍新基地建設を表明し、「県民の気持ちに寄り添う」(首相)どころか逆なでする姿勢まで示したことは許されません。
事件の背景に地位協定も
「大変残念だ。県民は納得しない」。翁長知事は怒りの表情で首脳会談の感想を述べました。
翁長知事は、首脳会談前に首相と会談(23日)し、「『綱紀粛正』『徹底した再発防止』などというのはこの数十年、何百回も聞かされたが、現状は全く何も変わらない」と批判していました。しかし、首相は首脳会談でも「再発防止」を求めるだけで、知事の要求に応えませんでした。
今回の事件を含め、なぜこういう事態が繰り返されるのか。
最大の要因は、国土面積の約0・6%しかない沖縄県に在日米軍専用基地面積の約74%という広大な米軍基地が集中し、県民が基地と隣り合わせの生活を余儀なくされていることです。沖縄の米軍基地の抜本的縮小、撤去に踏み出さない限り、「基地あるがゆえの犯罪」は決してなくなりません。
基地の重圧とともに県民に犠牲をもたらしているのが日米地位協定です。
日米安保条約に基づく日米地位協定は、在日米軍や軍人・軍属らの法的地位を定めています。米軍人・軍属が起こした犯罪に対する第1次裁判権は「公務中」は米側にあり、「公務外」では日本側にあるものの、犯人が基地内に逃げ込めば原則起訴まで身柄を引き渡さなくてもいいなど、米側に数多くの特権を認めています。
翁長知事は、米軍人・軍属の犯罪が繰り返される要因について「基地あるがゆえ」の問題に加え、「日米地位協定という特権的な状況があり、軍人・軍属が占領意識を持って県民を見ていることが大きい」と強調しています。「地位協定の下では日本の独立は神話」という知事の言葉に込められた沖縄の現実を直視すべきです。
在日米軍に治外法権的な特権を保障している屈辱的な日米地位協定の抜本的な見直しは、軍人・軍属らの犯罪を防止する上でも不可欠です。協定の改定に背を向けた日米両首脳の責任は重大です。
基地のない平和な沖縄を
首相は、「再発防止」のため「あらゆる手を尽くす」と述べました。しかし今回の会談は、翁長知事が首相にぶつけた「安倍内閣はできることはすべてやると言っているが、できないことは全てやらないという意味にしか聞こえない」(23日)との批判を証明しました。
首相は首脳会談で、辺野古の新基地を「唯一の選択肢」と改めて指摘し、「沖縄の皆さんの気持ちに寄り添わなければできない」と述べました。しかし、新基地建設こそ県民の気持ちを乱暴に踏みにじるものです。沖縄の怒りも痛みも分からない安倍政権を退陣に追い込むたたかいが重要です。