2016年5月25日(水)
きょうの潮流
祭壇に飾られた写真の女性は、ピンクのドレスに王冠を模したティアラを着け、ほほ笑んでいました。「彼女の笑顔を、忘れないでください」。涙で途切れる父親のあいさつに告別式は深い悲しみと怒りに包まれました▼犯行の卑劣さが明らかになってきた沖縄の女性遺体遺棄事件。逮捕された元米海兵隊員の軍属の供述によると、ウオーキング中の女性の頭を背後から棒で殴り、草むらに連れ込んで乱暴。首を絞め、ナイフで刺し殺したと▼容疑者は乱暴する相手を車で探していたといいます。傍らでうごめいていた残忍な悪意。自分が被害者でも不思議ではない、娘や孫が同じ目に遭っていたかもしれない―。痛みの共有は沖縄の苦難の歴史に重なります▼戦後70年以上も居座る米軍基地。今も占領者のように扱われる日米地位協定のもとで人権を侵されてきた県民の魂の飢餓感。翁長雄志知事は、それを「大切な人の命と生活を奪われた上、差別によって尊厳と誇りを傷つけられた人々の心からの叫び」(『戦う民意』)だと▼いま沖縄や全国でこれだけ悲しみがあふれ、怒りがたぎっているのに日本の首相はどこを向いているのか。地位協定の見直しも基地の撤去も、辺野古新基地の撤回さえ口にしません▼「もう我慢できない」。怒りの矛先は基地の存在とともに、こんな不条理を続ける日米の政府にも。あさって沖縄では県議選が告示され、県民大会から参院選へ。魂まで飢えさせる基地をすべてなくすため、オール沖縄の力をさらに強く。