2016年5月25日(水)
主張
政府月例経済報告
破綻を破綻と認めない無責任
安倍晋三政権が5月の月例経済報告で、「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」という判断を変えませんでした。3月の月例報告で2月までの「一部に弱さ」という表現を変更して以降、3カ月連続で同じです。景気の現状は消費の低迷が長引いているのに加え、賃上げなど所得の改善も不十分で、冷え込みがいっそう深まっています。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の破綻は明らかなのに破綻を認めず、消費税の増税など国民犠牲の経済政策を押し付けようとするのは、まったく無責任です。
国民生活の実態直視せず
政府の月例経済報告は、景気の現状や見通しについて関係閣僚会議で決定する、公式の報告です。その公式報告で景気の判断を変えず、先行き「緩やかな回復に向かう」と楽観的な見通しを振りまくのは、消費や所得の伸び悩みに苦しむ国民生活の実態を無視したものというほかありません。
景気を大きく左右するのは、日本経済の約6割を占める個人消費です。政府は3月の月例報告で全体の判断から「一部に」を削除した際、個人消費についても「総じてみれば底堅い動き」という表現を、「消費者マインドに足踏みがみられるなか、おおむね横ばい」に変更しました。消費の低迷は「マインド(心理)」だけの問題ではありませんが、表現の変更が長引く低迷を反映したことは明らかです。このころから安倍首相も、一昨年4月の消費税増税後、「予想外に消費が落ち込み、予想外に長引いている」と認めるようになりました。
消費の低迷は今年春以降も続き、総務省の家計調査報告では、2人以上世帯の消費支出は3月には前年同月比で5・3%の減少と大幅な落ち込みです。先週発表された1〜3月期の国内総生産(GDP)の速報値でも、同期の個人消費は名目値ではマイナスで、昨年4月から今年3月まで年度を通してみると、個人消費は前年度に比べマイナス0・3%で、14年度のマイナス2・9%に続き、史上初めて2年連続のマイナスです。月例報告が3カ月連続で判断を変えていないのは、深刻な実態に目をつぶったというしかありません。
「消費者マインド」が足踏みを続け、消費の低迷が長期にわたっている一番の原因が、一昨年4月の消費税増税にあるのは明らかです。消費税増税は家計の購買力を奪い、文字通り「増税不況」を引き起こしています。しかも、家計の所得が長年にわたって落ち込んでいるなかでの消費税の増税は家計を破綻させ、回復を困難にしています。勤労者の実質賃金は4年連続の落ち込みです。大企業がもうけを増やせば賃金や雇用が改善するという「アベノミクス」の筋書きは完全に破綻しており、経済政策の抜本転換が不可欠です。
消費税増税直ちに中止を
月例経済報告は「緩やかな回復基調が続いている」といいますが、4月以降は今年が「うるう年」だった反動もあり、熊本地震の影響もあって、景気がもっと悪化するという見方も広がっています。破綻を認めず、消費税増税など間違った経済政策を押し付けるのではなく、現実に向き合うべきです。
来年4月からの消費税増税は直ちに中止を―。それができない無責任な政府に、国民の暮らしを委ねることはいよいよできません。