2016年5月23日(月)
再批判 自民党改憲案(12)
地方自治破壊を狙う
地方自治は日本国憲法で定められた民主政治の柱の一つです。その理念は、戦前への反省から、中央集権を排し平和と国民の自由を保障するとともに、住民の直接参加による民主主義の発揚を図るものです。さらに、住民の要望にきめ細かく応え、国民の生存権保障の充実を図ることです。
ところが自民党改憲案は、この理念を切り縮め、地方自治そのものを破壊しようとしています。
理念縮めるもの
改憲案92条1項は、「地方自治は…住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う」と規定。同93条3項では「国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力」するとしました。
しかし、地方自治が果たす役割を「身近な行政」と割り切ることは、立憲・民主・平和・社会保障という地方自治の広範な理念を著しく切り縮めるものです。
生存権保障・社会保障の第一の責任を負うのは国です(日本国憲法25条)。ところが自民党改憲案では、国と地方の「役割分担」を強調しつつ「住民に身近な行政」の名のもとに、社会保障を地方に押し付ける態度です。しかも身近な行政は地方が「自立的」に行うと規定し“国に頼るな”という姿勢です。
93条3項では「地方自治体は、相互に協力しなければならない」とするなど、“苦しくても自治体同士でやりくりしろ”と言わんばかりです。
自民党改憲案は前文や家族の規定(24条)で自助・共助を強調し、さらに地方に責任を押し付け「自立」を迫ることで、国の社会保障に対する責任を免れる狙いです。
財源問題では、96条で地方の「自主財源」の原則を定め、「地方自治は自主的財源に基づいて運営されることを基本」(改憲案Q&A)とする一方、92条2項では、住民はサービスを受けるが、「その負担を公平に分担する義務を負う」と住民の負担義務を明記。「財政の健全性」の規定(83条2項)も準用しました。徹頭徹尾、国の社会保障の役割を地方と住民に押し付ける発想で貫かれています。これでは自治体の規模による格差が極端に広がります。
道州制に道開く
さらに財界が究極の「構造改革」と位置づける「道州制」に道を開こうとしています。
改憲案93条で「地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める」と規定。改憲案Q&Aでは「道州はこの草案の広域地方自治体に当たり、この草案のままでも、憲法改正によらずに立法措置により道州制の導入は可能」と明記しています。
歴史的に形成されたコミュニティーとかけ離れた巨大な「自治体」を強制的につくりだせば、自治体そのものが現実の人々の生活からかい離し、住民の政治参加も自治の機能も失われます。
(つづく)