2016年5月22日(日)
盗聴法拡大・刑事訴訟法改悪案
仁比議員の反対討論
参院本会議
日本共産党の仁比聡平議員が20日、参院本会議で行った盗聴法拡大・刑事訴訟法改悪案に対する反対討論の要旨を紹介します。
冤罪(えんざい)事件は、憲法と刑事訴訟法に反する捜査権限の乱用が生み出してきたものです。根深い自白偏重主義の温床は、わが国の刑事司法の構造的問題です。
本法案は盗聴の自由化と司法取引導入、取り調べの部分録画を柱にした憲法違反の治安立法に他なりません。
「どれだけ国民が苦しめば、冤罪を防ぐ法律をつくるのか」と訴えた冤罪被害者の怒りに背を向け、成立をはかろうなど断じて許されません。
反対理由の第一は盗聴の拡大です。
盗聴の本質は犯罪に無関係の通信をも根こそぎつかむ盗み聞きであり、適正手続きと令状主義を侵害する明白な憲法違反です。
法案は、対象犯罪を窃盗や詐欺など一般犯罪に拡大するものです。2人以上があらかじめ窃盗など役割を分担する意思を通じていると容疑をかけられれば、通信傍受が行われる危険があり、市民団体や労働組合も排除されません。
市民のプライバシー情報がひそかに侵害され、蓄積される膨大な情報は、公安警察をふくむあらゆる警察活動に利用されうることになります。国民監視の社会に変質させる危険があり、秘密保護法や政府がねらう共謀罪と結びつけばさらに重大です。
反対理由の第二は、取り調べの「一部可視化で一歩前進」などではなく、逆に、新たな冤罪の危険性を高めるものだからです。
捜査官がウソの自白を強要する人権侵害と誤った裁判の危険をなくすため、取り調べのプロセスすべてを事後的に検証可能にすることが可視化の出発点でした。ところが法案は、義務付けの対象を裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件に限定しています。
4月に、宇都宮地方裁判所で無期懲役判決が出された今市事件は、検察と警察が別件逮捕・起訴による長期勾留のもとで取り調べを行い、自白を迫るプロセスは録画せずに、完成した詳細な自白だけを録画して有罪証拠にする危険性を浮き彫りにしました。
法案は、自白強要の手段となってきた任意同行や起訴後勾留の取り調べが、録音録画義務の対象にはならないとする法務当局の重大な見解も明らかになりました。法制審議会で全会一致だった日弁連や学者委員からも「身柄拘束下の取り調べは録画義務の対象になる」と根本的な不一致をただす声が噴き上がっています。
反対理由の第三は、密告で他人を罪に陥れる危険がある司法取引の制度化です。
自白の強要による冤罪や非合法盗聴など卑劣な権力犯罪に何の反省もない捜査機関に適正な運用を期待するのは重大な誤りです。本改定案を否決し、抜本的な司法改革を強く求めます。