2016年5月20日(金)
「残業代ゼロ」制度見直し
米政府 420万人が所得増に
米労働省は18日、管理職や専門職などで一定以上の収入を得る労働者への残業手当の支払いを免除する制度「ホワイトカラー・エグゼンプション」を見直す新規定を確定しました。「残業代ゼロ」が適用される労働者の報酬要件が引き上げられ、それに伴い、420万人の労働者の所得が増えるとしています。
米政府の発表によると新規定の施行は12月1日から。残業代ゼロの対象者の報酬要件を、年収換算2万3660ドル(約259万円)以上から、4万7476ドル(約520万円)以上にします。
労働省は、新規定によって残業手当が支払われるようになる、もしくは報酬要件を上回る額に昇給となる労働者は、420万人になるとしています。
報酬要件は、今後3年ごとに見直すとし、2020年には5万1000ドル(約558万円)以上になることが見込まれています。
オバマ大統領は声明で、新規定は米国の「中間所得層の安定と強化のための正しい方向への第一歩だ」と述べ、労働者の所得増が消費につながり、「全ての経済成長に役立つ」と述べました。
オバマ氏は、米国民が少ない見返りであまりにも長く働かされる状況に置かれていると指摘。全ての勤勉な米国民が家族を養い、子どもたちにいろいろな機会を与えられる給与を受け取れるようにする取り組みは、「常に価値のあるたたかいだ」と訴えました。
米最大の労組全国組織、労働総同盟産別会議(AFL・CIO)のトラムカ議長は声明で、「労働者の生活を改善する大きな勝利」と述べ、オバマ政権の決定を歓迎しています。
同議長は、ホワイトカラー・エグゼンプションの見直しを、「ウォール街(金融業界)が有利になる不正操作された経済の規則を変革し始めている方法の一つ」と強調しました。
以前の報酬要件では、4人家族の勤労世帯の貧困ラインを下回る場合があることなどからオバマ氏は、14年3月に大統領令で見直しを指示し、これまで新規定策定のために取り組んできました。
(洞口昇幸)