2016年5月20日(金)
主張
核兵器禁止・廃絶へ
きびしく問われる日本の姿勢
オバマ米大統領が27日に広島を訪問することについて、安倍晋三首相は「『核のない世界』を実現するうえで大きな力になる」とのべ、自らの成果のように強調しています。しかし、いま国際舞台では、日本政府の被爆国にあるまじき態度が厳しく問われています。
禁止条約が本格的議論に
スイスのジュネーブでは今年2月から「核兵器のない世界」を実現するための「法的措置」を議論する作業部会が断続的に開かれています。昨年の国連総会で、7割を超える加盟国の賛成で設置が決められたもので約70カ国が参加、核兵器を禁止・廃絶する条約を本格的に議論する画期的な会議となっています。今後、議長の報告が国連総会に提出される予定です。
作業部会では、広島、長崎の被爆者も証言を行い、筆舌に尽くしがたい原爆の被害を語るとともに、核兵器を禁止し、廃絶するための条約の締結を訴え、大きな感銘を与えました。核保有国を国際司法裁判所に提訴したパラオ政府の代表は「被爆者の言葉は、われわれに立ちあがる勇気を与えてくれた」とのべ、核兵器の非人道性を訴える先頭に立ってきたオーストリアの大使は「私たちを奮い立たせてくれる」と語っています。
ところが、日本政府は作業部会の設置に「棄権」したのに、会議には出てきて「段階的アプローチが現実的だ」と核兵器禁止条約に反対するなど議論の大勢に逆行する態度をとっています。アメリカなど核保有国が会議をボイコットするもとで「核保有国の参加する場で議論を」「議論がまとまるとは思えない」などと会議自体を否定するような発言すらしています。
「核抑止力」論に固執する核保有国は、核兵器廃絶へ「段階的」に進むと言いながら、実際にはそれを永久に先送りする態度をとり、核兵器禁止条約の交渉開始に反対しています。日本政府の言動は「核保有国の代弁者」というべきものです。この姿勢には、他の政府代表からも疑問や批判が突き付けられました。「段階的アプローチでは何も達成されてこなかったではないか」との追及に、日本は説得力ある回答ができませんでした。
多くの非核保有国が「核兵器のない世界」の実現に本気で尽力しているのに、核兵器の被害を体験した日本が、それに背を向けるという構図は、まことに恥ずべきものです。この態度を根本的にあらためることこそが、いま日本政府に強く求められています。
オバマ大統領の広島訪問は、重要な前向きの一歩であり、被爆者の願いにこたえる行動です。さらなる前進につなげるには、被爆者の声に耳を傾け、原爆投下の実相を直視し、核兵器禁止条約の交渉に背を向けてきた、これまでの態度を再検討することが必要です。
決め手は世論と運動
いま全国で「被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」運動が広がりつつあります。「すみやかな核兵器廃絶を願い、核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶこと」を求めるこの署名を、内外で発展させるならば、それは国連や諸国政府の努力とあいまって、「段階的アプローチ」にしがみつく核保有国などの抵抗をのりこえる重要な力となるでしょう。日本共産党は、こうした運動と連帯、共同して、「核兵器のない世界」実現のために力を尽くします。