2016年5月15日(日)
きょうの潮流
自信過剰になる、自制心を失う、変化に取り残される―。権力について長く研究してきた米国の大学教授は、権力者が転落する原因には共通点があるといいます▼多くは欲しいものを何としても手に入れようとする強引な行動が表れ、社会の規範やルールを自分だけは破ってもよいと考えるようになると。古来、権力は腐敗する、権力は傲慢(ごうまん)につながる、といわれてきたゆえんか▼巨大な予算と人員を動かす東京都知事の座に就いたこの人はどうでしょう。海外出張にはファーストクラスに乗って高級ホテルのスイートルームに泊まる。公用車を使って自分の別荘に通う。批判されても「問題ない」と強弁する▼しかも舛添要一知事には政治資金を私的に流用した疑いもかけられています。家族で行ったホテルの費用や飲食代…。あいまいな説明で乗り切ろうとする姿からは、苦しい生活の中で納めている税金の重みをわからない鈍感さがにじんでいました▼折しも東京五輪の招致をめぐり、裏金疑惑が持ち上がっています。東京側から国際陸連の関係者に2億をこえる巨額が振り込まれていたことを仏検察当局がつかみ、捜査を始めました。五輪をカネで買ったとなれば、公明正大を旨とするスポーツからかけ離れた汚い世界です▼いま税金や公金の使い方、扱いに国民の多くが怒りや不満を覚えています。自分たちの暮らしに回らず、富裕層は税を逃れるという不公正さ。それをただすことのできない政治や人には退場してもらうしかないでしょう。