2016年5月14日(土)
主張
熊本地震1カ月
救援・復興に政治の責任果たせ
熊本県や大分県を中心にした地震災害で、最初の最大震度7の大きな揺れが起きてから、きょうで1カ月です。一連の地震は、直接的な死者49人、行方不明者1人、避難生活で命を失う震災関連死の疑いのある人19人などの犠牲を出したうえ、建物や宅地に甚大な被害を引き起こしました。体に感じる揺れは1400回を超えてもおさまらず、被災者は心が休まる余裕もありません。1万人以上もの避難者の暮らしは困難なままで、長引く避難生活による健康被害の広がりが心配されます。被災者の切実な願いに寄り添い、政治が苦難の解決へ力を発揮すべきです。
「未経験」に見合う支援で
熊本地震は、日本の観測史上未経験の状況となっています。
14日夜に最大震度7を観測したマグニチュード6・5の地震は「前震」で、2日後にその約16倍ものエネルギーのマグニチュード7・3の「本震」が襲うことは、従来の「内陸直下型の経験則」から考えられないことでした。阪神大震災級の揺れに2度も直撃された被害は甚大で、被災者にもトラウマなど深刻な影響を与えています。
今回のように広範な地域で同時に地震活動が活発に続いていることも、かつてない事態です。最初の揺れでは持ちこたえた建物も繰り返す揺れで、危険になるケースも生まれています。建物の全半壊、損壊が7万棟以上にのぼり、役場や病院、避難所となるはずの学校などまで使用不能に陥りました。
被災者や被災自治体の抱える困難は並大抵のものではありません。国は自治体の努力を支えるため人的支援、財政的措置などをはじめ、従来の発想にとどまらない施策の実行が求められます。
急がれるのは被災者の命と健康を守るための避難生活の改善です。熊本でも気温が上昇し夏日が続いています。この暑さが長引く避難で心身ともに疲労が蓄積している被災者に追い打ちをかけます。熱中症の症状で避難所から救急搬送される高齢者も相次いでいます。体育館など冷房のない避難所が多いなか、健康を守るためきめ細かな対応は待ったなしです。
食中毒対策や蚊などの発生への備えなど政府が作成・通知してきた指針などにもとづく対策を緊急にとるべきです。自家用車やテント、損壊した自宅に住み続ける人たちなどへのきめ細かな支援は不可欠です。震災関連死をこれ以上出すことはあってはなりません。
被災者が切実に願っているのは安心の住まいの確保です。仮設住宅建設を加速するため国公有地を確保するなど支援強化が必要です。住宅再建に希望を持てるようにするため、被災者生活再建支援法を抜本改正するなど公的支援拡充が重要です。被災者が公的支援を受けるために必要となる「罹災(りさい)証明書」発行が3割弱という事態は早急に打開すべきです。
「災害国」の力試される
農業・畜産、雇用、営業などへの対策と支援も急がれます。
熊本地震への支援をさらに強めると同時に、東日本大震災の被災者・復興支援の手を緩めるようなことがあってはなりません。いま「災害大国」日本の政治の姿勢が問われています。これまでの震災の痛苦の教訓を生かし、英知を結集し、すべての被災者が暮らしと生業(なりわい)を取り戻すまで、政治が責任を果たすことが求められます。