2016年5月12日(木)
オバマ大統領の広島訪問
核兵器廃絶求める運動広がり
米国内の世論にも変化
オバマ米大統領が現職大統領として初めて被爆地・広島を訪問すると決めた背景には、原爆投下をめぐる米国内の世論の変化と、核兵器の非人道性を告発して廃絶を求める運動の発展があります。(ワシントン=島田峰隆)
米国では、広島と長崎への原爆投下が戦争の早期終結につながり、多くの米国民の命を救ったと正当化する考えが根強くあります。しかし被爆者をはじめとした核兵器廃絶を求める運動が世界で広がるなかで米国内の世論には変化がみられます。
原爆投下直後の1945年8月の世論調査では、米国民の85%が原爆投下を支持していました。戦後70年の昨年4月の世論調査では「原爆投下が正しかった」とした人は56%。18〜29歳では47%と半数を割るまでに減りました。
今年4月にケリー米国務長官が広島を初めて訪問した際にも、米国内で大きな反発はありませんでした。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど主要紙は社説で、オバマ氏の広島訪問を支持。ニューヨーク・タイムズ紙は、「核兵器のない世界」という公約に沿った「目に見える新たなイニシアチブ」を促しました。
米国をはじめとする核保有国の指導者の被爆地訪問は、非人道性の観点から核廃絶を求める動きが広がる中で、国際社会が求めていることでもあります。
昨年4〜5月に開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書案は、米英カナダの反対で採択できなかったものの、核兵器の非人道性を問う流れの発展に随所で言及。「核兵器の被害を受けた人や地域と経験を直接共有し、人道面の影響を知ること」を含めた軍縮や不拡散の努力を、各国の「指導者」にも促していました。
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は同会議で「非人道性を問う国は国連加盟国の約8割だ。無視してはならない。核廃絶の緊急性を疑う者は被爆者の経験を聞くべきだ」と指摘。同氏は2010年に広島を訪問するにあたり、「世界のすべての指導者、特に核保有国の指導者には、広島と長崎を訪れ、核戦争が起こした激烈な現実を直接見ることを求める」と語っていました。
米国内ではオバマ氏の広島訪問を歓迎すると同時に、核廃絶への決意だけでなく具体的な措置を表明するべきだという意見が出ています。平和団体「ピース・アクション連合」は10日、「オバマ氏は手ぶらで広島へ行ってはならない」と指摘。核兵器禁止条約の交渉開始などに踏み込むよう求めました。