2016年5月12日(木)
熊本地震 各地の歯科医ら医療支援
避難ストレスで痛みやしびれ 無意識に歯食いしばる
熊本地震で長引く避難生活のストレスによる健康悪化が心配されるなか、避難所では、全国の医師会、歯科医師会による医療支援が行われています。 (矢野昌弘)
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鹿児島県曽於(そお)市の歯科医師、朝川慧(さとし)さん(71)は歯科衛生士とともに熊本県益城町で避難所となっている総合体育館で8日から住民の診療にあたっています。
朝川さんは「あごの状態は全身に及ぶ。避難生活のストレスで無意識に歯を食いしばっているため、頸肩腕(けいけんわん)症候群の症状が出ている」と指摘します。
頸肩腕症候群は、首や肩、腕などの痛みやしびれが主な症状です。
10日の夕方は、総合体育館に避難する男性(80)が「前歯が取れた」と訴え、診療を受けました。
朝川さんが義歯を調整すると、男性は「食べ物がかまれんかったので、助かった」と表情を明るくしました。
ふだん義歯を外す時間が多いという男性。朝川さんは「かむ力がしっかりすれば、全身の力がよみがえる。義歯をするのとしないのでは、避難生活での疲れ方が全く違う」と、義歯をつけることなどを指導していました。
「東日本大震災に続いて、自ら希望して参加した。診た人から口々に『楽になった』といわれた。これが医療だと実感した」と話す朝川さん。「口の中から、全身を精査するのが歯科。歯科の大事さを国民のみなさんに改めて訴えたい」と語っていました。
現地で診療にあたる歯科医師によると、歯磨きなどの口腔(こうくう)ケアによる誤嚥(ごえん)性肺炎の予防に力を入れているといいます。
「避難生活で体がだるく、歯磨きをするけどもおっくうで、磨ききれていないことが多い。歯科医や歯科衛生士など専門家から、口腔ケアの評価を受けることなどが大切だ」と話します。
また本震から3週間が経過し、ストレスからくる心因性舌痛症などの身体表現性障害の発症が懸念されるといいます。
「避難所の外に出て、社会性を回復させることが一番の治療法だ。また、医師ら専門家に自分の症状を聞いてもらうことも有効だ」と語っています。