2016年5月11日(水)
きょうの潮流
9日に大統領選挙が行われたフィリピンは、ブラジル、メキシコに次ぐ世界第3のカトリック大国。約1億人の人口のうち81%がカトリック教徒で、5%がイスラム教徒。独立を求めてきた南部のイスラム教徒武装組織と政府の和平合意は、実現が難航しています▼住民はマレー系が多数ですが、300年以上もスペインの植民地支配を受けたため混血も多い。次期大統領に当選したダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏のように、姓名は圧倒的にスペイン系です▼一方で、南シナ海問題で対立している中国との歴史的なつながりも深い。ドゥテルテ氏は「私の祖父は中国人だ。戦争などする気はない」。アキノ現大統領の母方の祖先も中国・福建省出身です▼米国とは米比相互防衛条約という軍事同盟を維持しています。それでも国民は「主権」に対する強い意識を持っています▼以前、取材に応じた外務省高官は「(1992年に)常駐米軍に出て行ってもらったのはフィリピンの主権の問題だからだ。正しい決定だ」と断言しました。ドゥテルテ氏も、ダバオの空港を対テロ無人機作戦に使いたいとの米国の要請を拒否したことがあります▼今年から米軍部隊をフィリピン軍基地にローテーション展開させる新協定の運用が始まりました。日本の平和運動と交流が深い元フィリピン大学教授のシンブラン氏は警告します。「フィリピン憲法は平和共存に基づく独立外交を宣言している。われわれの国土を再び他国攻撃の出撃地にしてはならない」