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2016年5月9日(月)

主張

待機児「緊急対策」

子どもの安全が守られてこそ

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 保育所の入所を希望しながら入れない待機児問題で、安倍晋三政権が打ち出した「緊急対策」にたいして、父母や保育士、自治体関係者からの不安や疑念が相次いでいます。「緊急」の名のもとに、保育施設の受け入れ基準を緩め、乳幼児を「詰め込む」ことが中心になっているためです。子どもの健やかな成長・発達を保障するために設けられている保育施設のさまざまな基準を緩和することは、子どもの安心・安全の大本を揺るがす重大な逆行です。急場しのぎの対策で、安全を犠牲にすることは絶対にあってはなりません。

命を預かる体制が揺らぐ

 安倍政権の緊急対策は、「保育園落ちたの私だ」という父母をはじめ、国民の怒りが急速に広がるなか、3月に大あわてで決められました。しかし、認可保育所の増設や保育士の処遇改善などの抜本的な解決の方向は盛り込まれず、もっぱら、既存保育施設の面積や保育士配置の基準などを緩和し受け入れ枠を広げた「詰め込み」によって乗り切ろうというものです。

 厚生労働省は待機児童数が多い自治体にたいして基準を緩めることを求める通知を出すなどしていますが、自治体の現場からは異論や戸惑いの声が上がっています。

 認可保育所の基準は、国が「1歳児6人に保育士1人」などと定めていますが、少なくない自治体は「1歳児5人に保育士1人」などと、上乗せした基準を独自に決めています。国基準では、子どもの安全や成長・発達を保障するのに不十分という判断からです。保育事故に詳しい専門家からは、国基準では1歳児の食事を見守る体制として弱く誤(ご)嚥(えん)窒息などを起こすリスクが高いとの指摘もあります。自治体に「詰め込み」を迫る国のやり方は、あまりに危険です。

 3〜4月に東京と大阪の認可外保育施設で、昼寝中の乳児が亡くなるという痛ましい保育事故が相次ぎました。東京の事故は事業所内保育所で起き、保育士資格のない非常勤職員が、異変に気付かなかったとされています。大阪の事故のあった施設では、職員が1人しかいない時間帯があったなど不備が明らかになっています。幼い子どもの命を預かる万全の体制でなかったことは極めて深刻です。

 保育施設内の事故について昨年の政府の調査では、子どもの死亡は認可施設4人、認可外施設10人でした。認可・認可外を問わず子どもの命が失われる事故はあってはなりませんが、保育士配置が少なくてもよい認可外施設の事故率が高いとする研究者の分析を重く受け止める必要があります。

 政府の緊急対策は、保育士資格を持つ人が少なくてもいい小規模保育施設の定員枠の拡大などもすすめるとしていますが、どのように子どもの命と安全を守ろうとするのか。子どもを犠牲にした「待機児解消策」は本末転倒です。

保育士の処遇改善は急務

 いま必要なのは認可保育所の緊急増設です。国は自治体を財政的に支える責任を果たすべきです。

 保育の「量」とともに安全・安心の「質」を確保するためには保育士不足の打開が待ったなしです。そのために日本共産党など野党は保育士給与月5万円アップのための処遇改善法案を国会に提出しています。安心・安全の保育を求める父母・保育士の願いにこたえる政治への転換が急がれます。


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