2016年5月7日(土)
再批判 自民党改憲案 (3)
軍機保護・軍刑法の危険
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自民党改憲案では、国際の平和と安全のため「国際的に協調して行われる活動」への国防軍の参加を可能としています。あえて「国連」という言葉を外しています。
イラク戦争のような、国連憲章の平和秩序を踏み破る、米国の単独行動への参加を可能としているのです。
秘密法に“根拠”
戦争法の中の、派兵恒久法=国際平和支援法では、何らかの国連決議の存在が、米軍等の武力行使への後方支援の要件ですが、そうした決議は不要となり、「後方支援」にとどまらず共同の武力行使が可能となります。
改憲案では「国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める」(9条の2第4項)としています。「軍事機密の保持」が憲法上の“価値”となり、特定秘密保護法が大手をふるってまかり通る「憲法」です。
何が秘密かも秘密、秘密を探ろうと相談(共謀)しただけで処罰される異常な弾圧法規に、憲法上の“根拠”を与えます。
改憲案21条は、表現の自由に関し、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」は認めないと規定。「軍事機密」を侵す報道や調査は、人権として保障しないことになりかねません。
殺害命令の貫徹
改憲案は、軍人の「職務の実施に伴う罪」などを裁判するため、「国防軍に審判所を置く」としています。
軍人の「職務の実施に関する罪」を定めるのは「軍刑法」です。軍刑法は軍人を規律するため特別の罰則を規定したもの。例えば、旧陸軍刑法57条では、敵前で上官の命令に服従しなかったものは最高で「死刑」でした。「人を殺すな」という人間の最低の基本倫理に対し、「人を殺せ」という命令が優越します。
戦場で「殺し殺される」状況のもと、上官の命令は絶対です。それを強制する軍刑法なしに戦争はできません。
戦争法では自衛隊法にある「上官の職務上の命令に対し多数共同して反抗した者」などを処罰(最高懲役7年)する規定を「国外犯」に拡大。「日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する」としました。(122条の2)
自衛隊はこれまで「専守防衛」のもと、外国領土での戦闘を基本的に予定していませんでした。ところが、集団的自衛権の行使が可能となり、他国領土での戦闘で敵兵の殺害をはじめとした命令の貫徹を求めたのです。
自民党改憲案が実現すれば、さらに軍人処罰の範囲も、処罰の上限も無制限に拡大します。
(つづく)