2016年5月7日(土)
主張
ライドシェア導入
タクシーの安心・安全壊すな
一般ドライバーがスマートフォンアプリを介して利用者と契約し、自家用車で運ぶライドシェア(相乗り)の導入に向けて経済界や政府の動きが加速しています。「利用客の安全が守れない」とタクシー労働者らの批判が高まるなかでの推進は、あまりに危険です。
緩和どころか規制崩壊
安全性を確保するために、一般ドライバーが自家用車で客を有料で送迎することは、道路運送法で原則禁止されています。営業許可のあるタクシーは緑地のナンバープレートであるのに対し、無許可車は白地ナンバープレートのままなので、「白タク行為」とされ、取り締まりの対象です。
ライドシェアは「白タク行為」そのものです。
タクシードライバーに必要な二種免許は必要ありません。「免許取得後1年以上経過」「認定講習の受講」などの条件をあげるだけで、運転前のアルコールチェックの義務付けもしません。乗客の安全を保障するしくみはぜい弱です。すでにライドシェアを解禁している各国では業務停止命令や訴訟が続き、国際労働機関(ILO)も問題視しています。
政府は特定の地域で「規制緩和」をすすめる国家戦略特区のしくみを利用し、現在は福祉事業などで例外的に認めている「自家用有償旅客運送」の枠を拡大して「白タク合法化」を狙います。
外国企業は日本進出の準備を着々と進めています。昨年3月米国・ウーバー社が福岡市で実証実験をしました。兵庫県養父市も導入をすすめ、京都府京丹後市ではアプリを利用したNPOによる自家用有償運送が始まります。
当初の導入理由は「過疎地域でのバスやタクシーの利用が困難な住民の足の確保」でした。2020年の東京オリンピックを視野に入れ、個人宅の空き部屋などを貸し出す「民泊」とセットの「シェアリングエコノミー」で、観光客の輸送需要に対応する制度としてなし崩し拡大を狙います。
導入を推進するのは新経済連盟の代表理事、三木谷浩史楽天社長らです。同氏は昨年、日本に進出を狙うライドシェア企業の一つ、米国のリフト社に出資し、取締役に就任しました。もうけ優先で導入先にありきの姿勢は問題です。
日本共産党の辰巳孝太郎参院議員は国土交通委員会で「規制緩和どころか規制崩壊だ」などと繰り返し追及し、地域公共交通施策の充実を求めました。
ライドシェア導入を阻止し、公共交通の安全を守ろうとのたたかいは労使をこえ、組合の違いをこえて広がっています。タクシーやバスの労働者らでつくる全労連の自交総連はじめ、連合加盟労組を含む8団体の共同で3月初めに集会を開きました。ライドシェア推進にはなんの道理もありません。
利用者の命を最優先に
ライドシェアは副業を想定したしくみです。価格破壊が容易に起こり、今でさえ早急な改善が必要なタクシー労働者の低賃金と劣悪な労働条件はさらに悪化します。
相次ぐバス事故に明らかなように、事業参入拡大を狙う規制緩和は利用者の命を危険にさらします。自交総連は「安心・安全、持続可能な公共交通を担うタクシーをめざして」など政策提言を重ねています。逆行を許さず、安全輸送第一の政策へ転換が急がれます。