2016年5月4日(水)
主張
新国際署名始まる
被爆者とともに核兵器廃絶へ
「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」運動が始まりました。ノーベル平和賞候補となった谷口稜曄(すみてる)さんやサーロー・セツコさんをはじめ9人の被爆者が世界に呼びかけたものです。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の呼びかけで4月27日に東京でキックオフ行動がおこなわれ、全国で行動が繰り広げられています。
非人道的兵器は禁止を
新しい国際署名は、すみやかな核兵器廃絶を願い、「核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことを、すべての国に求めます」という被爆者の訴えへの賛同を求めるものです。
被爆者の平均年齢はすでに80歳を超えています。「後世の人びとが生き地獄を体験しないように、生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したい」(新国際署名の「訴え」)というのが、被爆者の切なる願いです。
今年は日本被団協結成60年です。原爆被害の告発を恐れる米国の占領政策、病苦と貧困、社会的差別のもとで、沈黙を強いられてきた被爆者は1956年8月、「自らを救い、私たちの体験を通して人類の危機を救おう」(結成宣言「世界への挨拶」)という決意のもと、「ふたたび被爆者をつくるな」と立ち上がりました。被爆者が訴えてきた筆舌に尽くしがたい体験は、日本と世界の反核平和運動の原動力となっています。
いま被爆者の叫びが世界を動かしつつあります。昨年の国連総会では、核兵器を非人道的兵器として禁止し、廃絶することを求める決議「核兵器の人道的結果」が初めて採択されました。核兵器を禁止し、廃絶する条約の交渉を求める決議は、加盟国の70%を超える圧倒的多数で採択されています。
4月中旬、核保有国のアメリカ、イギリス、フランスの外相らが初めて広島の平和記念公園を訪問し、オバマ米大統領も5月末の伊勢志摩サミットに合わせ、広島を訪問する意向と伝えられています。核保有国は依然として「核抑止力」論にしがみつき、核兵器禁止条約の交渉開始などの具体的な行動に踏み出そうとしていません。広島を訪問するなら、被爆の実相を直視し、被爆者の声に耳を傾け、「核兵器のない世界」へ実効力のある行動を決断すべきです。新しい国際署名は、核保有国に迫る世論を発展させていくうえで大きな力を発揮するに違いありません。
今回の新国際署名は、従来までの原水爆禁止運動や労働組合運動などの垣根を越えた広範な団体・個人が賛同し、取り組もうとしています。国家補償にもとづく援護を求める被爆者への支援と連帯は、原水爆禁止運動の基本的な課題の一つです。同時に、被爆者の願いに応えることは日本の平和運動の原点といえます。新国際署名が、国民的な共同の運動として発展することが期待されます。
問われる被爆国の立場
安倍政権は、被爆国を「アピール」しながらも、実際には米国の「核の傘」に依存し、核保有国と歩調をそろえて、核兵器禁止条約の交渉開始に反対するなど被爆者の願いに背を向け続けています。非核の世論を結集し、被爆国にあるまじき政治を変えるためにも新しい署名運動は重要な意義があります。日本共産党もこの運動の発展に力を尽くすものです。