2016年5月3日(火)
再批判 自民党改憲案 (1)
「個人」が消え国家優先
安保法制=戦争法を強行し乱暴に憲法秩序を破壊した安倍晋三首相は、夏の参院選に向け明文改憲に踏み込む攻撃的姿勢を強めています。戦争法廃止か安倍改憲か―。憲法施行69年の記念日はまさに歴史的岐路のなかで迎えます。
改憲・右翼団体「日本会議」が中心母体となってつくる「美しい日本の憲法をつくる会」は、いま「憲法改正を実現する1000万人ネットワーク」運動を展開しています。
同会は、賛同者向けのメール(4月27日付)で、「本年7月に予定されている参議院選挙を前に、いま、憲法改正問題は、改正発議の対象を検討する段階」と強調。「参議院選挙において改憲勢力が国会の3分の2を占めるか、護憲派がそれを阻止するかが戦後史を画する重大な政治選択として浮上」と呼びかけ、「緊急事態条項」創設を優先課題として取り組みの強化を訴えています。
在任中にと執念
同会が昨年11月に開いた1万人集会(東京・武道館)にメッセージを寄せていた安倍首相は、年初から、夏の参院選挙で改憲を争点化する姿勢を示し、9条2項の改定にも繰り返し言及。「在任中に成し遂げたい」(3月2日、参院予算委員会)とまで述べています。
安倍首相は、改憲内容について「自民党の憲法改正草案がある」と強調。「既にわれわれは、衆議院2回、そして参議院1回、このこと(改憲案)についても掲げ選挙をたたかい、大勝させていただいている」(2月4日、衆院予算委)などと発言しているように、自民党改憲案の中身が、重大争点となっています。
自民党改憲案は、2009年に惨敗して下野した自民党が、「保守政党」としてどんな日本を目指すのかを、新たに全面的に示したもの。いわば自民党の「世界観」「総合綱領」です。
その内容は、近代立憲主義の成果を受け継ぎ発展させた日本国憲法の核心を全面否定し、歴史を逆戻りさせる恐るべき内容です。
近代憲法の根本原理である「個人の尊厳」について、「個人」(憲法13条)という根本概念を消し去り、個人の尊厳を守るために認められた基本的人権の「永久不可侵」規定(97条)を全面削除しています。
それらの規定の根本にある、人は生まれながらにして自由、平等であるという「天賦人権思想」そのものを否定しています。まさに個人の人権を守るための「憲法」が「憲法でなくなる」世界です。
問題改めて検証
本紙では第2次安倍政権発足(2012年12月)の直後、自民党改憲案の全面批判をいち早く連載し、パンフレット(『全批判 自民党改憲案』)にもなっています。戦争法の強行と新たな明文改憲の動きの強まりのもと、改めてその問題点を検証します。(つづく)