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2016年4月29日(金)

東住吉事件 検察、有罪立証せず

大阪地裁 再審公判始まる

朴さんの無罪 8月に判決へ

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 えん罪東住吉事件のやり直しの裁判(再審)が28日、大阪地裁で始まり、朴龍晧(ぼく・たつひろ)さん(50)の初公判が開かれました。

 冒頭、裁判官から意見を求められた朴さんは、「ぼくは放火殺人をしていません。まったく身に覚えのないことで、ぼくは無実です」とのべました。

 検察官は冒頭陳述で、「有罪であるとの主張、立証は行わない」とのべました。

 小6女児が焼死した火災を「保険金目当ての放火」とした警察、検察の構図は、完全に崩れました。弁護団、検察の双方が現場の状況を再現した燃焼実験で、科学的な鑑定から「自白」のような放火はありえないこと、現場にあった車から漏れ出たガソリンの「自然発火の可能性は否定できない」(大阪高裁の再審開始決定)ほどに明らかになっていることを、朴さんの弁護団が弁論で明らかにしました。

 朴弁護団の乗井弥生弁護士は、放火を認めた虚偽の自白調書を証拠から排除するよう求めました。

 朴さんは被告人質問で、「ウソの自白は人生最大の後悔だ。無実の人にウソの自白をさせるような取り調べはやめてほしい。正しい捜査や裁判をしてほしい」とのべました。

 朴さんの再審は同日結審し、次回8月10日に無罪判決が出ることが確定的になっています。

 同様に再審開始が決まっている女児の母親、青木恵子さん(52)の第1回公判は5月2日に開かれる予定です。

解説

えん罪生んだ自白強要

 東住吉事件は、「事件」ではなく、駐車場の車から漏れ出たガソリンが風呂釜の種火で自然発火し小6女児が焼死した不幸な事故でした。それを保険金殺人と見立てた捜査当局の強引な取り調べで、罪がねつ造されたことが「事件」なのです。

 火災発生から50日後に警察に連行された青木さん、朴さんは、任意捜査であることも、黙秘権があることも告知されないまま事情聴取されました。否認すると刑事が大声でどなりつけ、「おまえがやった」と決め付けられました。

 朴さんは、首を絞める、足をける、書類の束で頭をなぐるなどの暴行を受け、「否認すれば死刑になるぞ」という脅しを受け、犯人になったことを想像しながら「自白」をせざるをえませんでした。

 自白をとるためならどんな違法なことでもやる警察、それをうのみにする検察、「自白調書があるのだから」と有罪にした裁判所―。何がえん罪を生んだのか、その責任はどこにあるのか、徹底して検証すべきです。

 無法な自白強要の一掃のためには、取り調べの全過程の可視化が不可欠です。いま参院で審議されている刑事訴訟法改悪案の「可視化」は、捜査側に都合の良い場面だけを記録するもので、えん罪防止にとって百害あって一利なしです。その深刻な問題点が、東住吉事件の経過からも浮かび上がっています。(竹腰将弘)


 東住吉事件 1995年7月に大阪市東住吉区で起きた小6女児死亡火災で、女児の実母の青木恵子さん(52)、同居していた朴龍晧(ぼく・たつひろ)さん(50)が殺人などの罪で無期懲役刑を受けた事件。大阪高裁が昨年10月、裁判のやり直し(再審)と刑の執行停止を決め、2人は20年ぶりに釈放されました。


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