2016年4月24日(日)
主張
阪神、東北、九州
震災はどこでも、経験生かせ
熊本県や大分県を中心とした九州地方の地震災害の発生から1週間余りたちました。現地はいまだに強い地震が続く異常な状態で、10万人近くの避難が続き、地震や雨による土砂崩れの危険のため、被災した住宅の後片付けも、道路などの復旧もままならない状態です。日本列島はこの20年余り、阪神・淡路大震災、東日本大震災など、数々の地震被害に見舞われてきました。専門家からは地震の活動期に入ったと指摘されています。これまでの経験を生かし、英知を結集して、今回の震災にも立ち向かっていくことが求められます。
「忘れたころに」ではない
いまから21年前の1995年1月に発生した阪神・淡路大震災で、街全体が崩れ落ちた神戸や阪神間の都市の姿や、学校の体育館などの避難所に毛布や段ボールを敷いただけで身を寄せ合っていた被災者の姿をつい昨日のように思い出します。その後2011年3月の東日本大震災でも、今回の九州地方の地震でも、同じような光景が繰り返されているのは、胸が締め付けられる思いです。
地球表面のプレート(岩板)がぶつかり合い、陸にも海にも断層が多い日本列島は、世界有数の地震大国です。しかも最近、地震は増えており、震度7クラスの大地震だけでも阪神・淡路や東日本に加え、04年10月の中越地震や今回の九州など、ほぼ数年に1回起きています。いまや震災は「忘れたころ」にではなく、いつでもどこでも起きる災害です。
阪神・淡路大震災の場合は地震直後の大火が、東日本大震災の場合はその後の津波と東京電力福島原発事故が被害を広げました。今回の九州地方の地震も、震源域が連鎖的に拡大して被害を広げています。被害の現れ方にはそれぞれ特徴がありますが、大きな地震がきっかけになった点では共通です。経験は生かすべきです。
たとえば最も基本となる住宅や公共施設の耐震化や耐火です。阪神大震災でも九州でも、耐震基準が強化される前の住宅などが大きな被害を受けています。九州では、避難所となるべき学校や対策のセンターとなる自治体の庁舎まで大きな被害を受けました。公共施設の耐震化率(14年度末)は全国で最も高い東京都の97・9%に対し、熊本県は88・5%で10ポイント近く低く、庁舎は83・4%にすぎません。遅れを検証することは今後の各地の被害防止にも重要です。
被災した住民がまず助けを求める避難所も、冷たい食事ばかり出る、ゆっくり足が伸ばせないなどの問題がこれまでも繰り返し指摘されてきました。抜本的に改善されていません。高齢者や障害者のための福祉避難所も圧倒的に不足しています。段ボールで間仕切りを作ったり、ホテルや旅館を利用するなど、各地に知恵が蓄積されています。英知を生かすべきです。
人間らしい暮らし優先で
食事や水が足りなかった避難所も、時間がたてば着替えや健康などが問題になります。人間らしい暮らしが維持できるよう、多面的な要望への対応が必要です。仮設住宅の確保や住宅の再建も、地域コミュニティーの維持が求められた過去の経験を尊重すべきです。
何より欠かせないのは、住民が生活と生業(なりわい)を取り戻すまで、国や自治体が手厚い支援を続け、被災者を励まし続けることです。