2016年4月22日(金)
政府の震災対応に疑問の声
救命・救援に全力あげるべきときに
熊本県を中心にした地震で被害が拡大するなか政治に求められているのは、党派を超えて救命・被災者救援に全力をあげることです。ところが政府の震災対応には「本当に被災者・被災地に向き合っているのか」と疑問符のつく問題が出ています。
川内原発止めず
震源域が九州横断的に拡大し、地震が今後どのように広がるか予測がつかないもとで、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の稼働を続けていることに、住民の不安が広がっています。
地震被害で新幹線、高速道路も不通。万一過酷事故が起きた場合に避難に重大な支障が生まれます。電力の不足も生じておらず、川内原発運転継続の必要性はありません。
こうした理由から日本共産党は16日、「不測の事態に備えて川内原発をただちに停止を」と政府に要請。国会質問でも「少なくとも稼働継続ありきではなく、継続の是非について専門家の英知も結集して真剣な検討を行い住民の不安にこたえるべきだ」(笠井亮議員、18日の衆院TPP特別委員会)と求めました。
政府は「今のところ安全上の問題はないと判断された」(丸川珠代原子力防災担当相)と止めようとしません。「情報提供が十分でない」という菅義偉官房長官の呼びかけで18日に原子力規制委員会の臨時会合が開かれましたが、規制委の出した結論は「安全上の問題があるとは判断していない」(田中俊一委員長)というものです。
オスプレイ投入
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災害支援活動に米軍のMV22オスプレイが投入されていることにも疑問の声が広がっています。
そもそも自衛隊のヘリなどによる物資輸送に加え、米軍オスプレイの支援を受ける必要があるのか―。元自衛官の一人は「自衛隊が持っているCH47ヘリの方が積載量が多く、固定翼を持ち着陸できる場所を選ぶオスプレイよりも機動性が高い。オスプレイの方が航続距離が長いといわれるが、今回は被災地の近くに自衛隊基地をはじめ運用できる場所があり、支障はない」とし、「オスプレイ宣伝のために災害を使うな」と述べます。
しかも、当初、中谷元・防衛相は「米軍から協力の申し出があった」と説明していましたが、実態は日本政府の要請であったことが、米海兵隊発表や米海軍準機関紙・星条旗報道などから明らかになっています。
中谷防衛相は、戦争法に基づき設置された日米の「軍軍間の調整所」である「共同調整所を設けて実際の支援内容を調整」すると表明。自衛隊のヘリ空母「ひゅうが」にオスプレイが着艦して支援物資を積み込む計画も検討しています。
最も重要な被災者の支援、救助より「政治的パフォーマンスとも受け取られかねず、身内であるはずの防衛省幹部も『露骨すぎる』とあきれている」と、地元紙からも不信が示されます。
TPP審議優先
熊本地震(14日〜)の被害が拡大するなか、日本共産党や民進党などの野党は、いま国会がやるべきは環太平洋連携協定(TPP)の審議ではなく、「被災者の苦難に心を寄せ、救援に全力をあげるとともに、そのための質疑を行うことではないか」と主張し、TPP承認案などの質疑は先送りするよう求めていました。
ところが、政府・与党側は18日、震災対策の陣頭指揮に当たるべき安倍晋三首相らも出席して、衆院TPP特別委の再開を強行しました。同日の与野党国対委員長会談で自民党の佐藤勉国対委員長は「安倍首相の強い意向でTPPを一歩でも前に進めたい」と述べ、首相の意向による再開強行だと明らかにしました。震災対策よりもTPP優先だといわれても仕方がありません。
緊急事態条項で改憲
菅義偉官房長官は記者会見(15日)で「緊急事態条項」創設のための改憲について、「極めて重く大切な課題だ」と発言しました。
自民党改憲草案にある「緊急事態条項」は、「外部からの武力攻撃」などを想定し、内閣に権限を集中するなど戦時体制づくりが狙いです。
震度7を2回記録する強い地震が続くなど多くの犠牲者や避難住民を生んだ震災に対して激甚災害指定を渋りながら、一方で大災害引き合いに出して「緊急事態条項」創設に触れて、改憲の意図をあからさまに示す姿勢は許されるものではありません。