2016年4月18日(月)
主張
全国学力テスト
確かな学力と無縁の点数競争
文部科学省は19日、小学6年生と中学3年生全員を対象に、国語と算数・数学の2教科で全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)を行う計画です。熊本県内では地震被害の影響で中止・延期も検討されていますが、今年で10年目の実施になります。
実施する口実は破たん
全国学力テストは2007年に第1次安倍晋三政権のもとではじめられました。文科省は「子どもの学力の状況を調べる」「指導の改善に役立てる」などを導入の口実にしていました。しかし、これらの口実はすでに大きく破たんしています。
全国学力テストは、回を重ねるごとに、点数競争が激化しています。教育委員会や校長などが「昨年の平均点を超えろ」「全国の平均点より上に」と教師をあおり、学力テストの過去の問題や類似問題を子どもに繰り返しやらせています。4月の学力テストに備え、春休みの宿題に過去の問題をやらせる学校もあります。
このような“点数対策”が横行する状況でテストをしても、子どもの本来の「学力状況」を調べることにならないのは明らかです。むしろ、学力テストの点数を上げることが至上命令になることでテストに関係ない授業や行事が削られ、子どもたちから学ぶ喜びを奪う弊害が大きくなっています。
「指導の改善に役立てる」という口実も成り立ちません。学校での通常のテストは、授業でやったことをきちんと理解しているか、どの子がどこでつまずいているのかを教師が把握でき、すぐ次の指導に役立ちます。しかし、全国学力テストは結果が分かるのが数カ月後です。答案用紙は返却されず、問題ごとにできたかできなかったかの表が示されるだけです。子どもは自分がどこをどう間違えたか分からず、教師も具体的な指導ができません。
そもそも、短時間で正解を出すことを求める学力テストの結果に表れるのは、その教科で学習したことの一部にすぎません。学力を確かで豊かなものにするには、じっくり考えたり、話し合ったりすることが大切です。学んだことを自分の生き方や地域の現状と結び付けて考えることも重要です。日本の教師たちはこうした授業をさまざまに工夫してきました。
ところが、子どもに確かな学力をつけるため自主的に創意工夫した授業をする自由が、学力テストの点数アップが最優先されるなかで教師から奪われてきています。日本の教育にとって大きなマイナスです。
文科省は2年前から、教育委員会の判断で学校ごとの学力テストの平均点を公表できるようにし、点数競争に拍車をかけています。学力テストの平均点が教育の最重要課題であるかのように扱われる風潮のまんえんも深刻です。全国学力テストは廃止するべきです。
創意工夫の自由保障を
全国学力テストには、今年度も52億円の予算が計上されています。子どもに確かな学力を保障するためには、全国学力テストで競争をあおり教師の自由を奪うのではなく、小中学校全学年での35人学級の実現などに予算を使い、学習の遅れがちな子どもにも丁寧に対応できるようにするなど、一人ひとりの子どもに目が行き届くようにすることこそ必要です。