2016年4月17日(日)
主張
九州地方地震災害
拡大に備えて最大限の対策を
熊本地方を中心に九州で続いている連続地震は、16日未明にマグニチュード(M)7・3の、阪神・淡路大震災に匹敵する大きな地震が発生、地震の発生は阿蘇地方や大分県にも広がり、亡くなった人やけがをした人がさらに増えるなど、被害は拡大を続けています。現地では余震が続くなか、被災者の救出や救援の活動が続いていますが、16日夜から17日にかけては強い雨の予報が出され、被害が広がることが懸念されています。事態の拡大に備え、最大限の対策を強めることが求められます。
阪神・淡路大震災に匹敵
16日未明のマグニチュード7・3の地震では、熊本県菊池市などで最大震度6強の揺れを記録しました。気象庁はこの地震が今回の一連の地震の「本震」で、それ以前の14日夜の最大震度7などの地震は、本震に先立つ「前震」との見方を明らかにしました。
16日未明の地震は14日夜の地震で動いたとみられる日奈久断層と交接する布田川断層付近で起きたとみられます。この地震の後、震源の北東側の阿蘇地方や大分県でも地震活動が活発化しており、震度5や6クラスの強い地震が相次いで発生しています。
一連の地震では熊本市内や益城町内だけでなく、阿蘇市や南阿蘇村など阿蘇地方でも、住宅の倒壊や地滑りなどが相次ぎ、多くの死傷者が出ています。道路が寸断されたり、住宅やアパートの1階が完全につぶれ住民が生き埋めになったりしたところもあり、寸刻争う捜索と救援が求められます。
それぞれの地震の関係はすべて明らかになっているわけではありませんが、大分から熊本にかけては「大分―熊本構造線」や「別府―島原地溝帯」とも呼ばれ、日本列島が形成される過程でできた、本州から四国、九州にかけての「中央構造線」と呼ばれる日本最大の断層帯の西の端です。大分側では「別府―万年山(はねやま)断層帯」、熊本側では「布田川・日奈久断層帯」などの断層が複雑に絡み合っています。断層の一部が動いたのがきっかけになって動かなかったところが動いたり、他の断層が動いたりすることもあり、警戒が必要です。
断層帯の延長に位置する阿蘇山の動きも気になります。現在のところ、阿蘇山の火山活動の活発化と地震の関連は薄いといわれていますが、今後、断層帯が大きく動いたことがきっかけで阿蘇山が大噴火することにでもなれば、広い範囲に大きな被害を及ぼすことになります。とりわけ全国で唯一稼働中の九州電力川内原発など、原発への影響が懸念されます。地震と火山噴火への住民の不安に応えるため、原発への対応を根本から見直すべきです。
雨などの二次災害を防ぐ
警戒が必要なのは、雨風への対策です。度重なる地震で屋根など家屋が破壊され、地盤も緩んでおり、少しの雨でも大きな災害につながりかねません。もともと熊本県から大分県にかけては阿蘇山などの噴火で堆積物が降り積もった弱い地層です。被災した住民に安全な避難場所を確保するとともに、土砂災害などが起きないよう対策を急ぐべきです。
被災者が狭い車のなかで長時間過ごしたため健康を損なうこともあります。地震で助かった命が避難中に損なわれることが決してないよう、対策を強めるべきです。