2016年4月17日(日)
震源域が拡大
活断層多く複雑な様相
熊本県熊本地方で相次いでいる地震活動は、14日午後9時26分ごろ発生したマグニチュード(M)6・5の地震を上回るM7・3の地震が16日午前1時25分ごろ発生したほか、阿蘇地方や、さらに隣県の大分県でも強い揺れの地震が発生して被害が拡大するなど複雑化しています。
政府の地震調査委員会が15日にまとめた評価では、14日の地震について、熊本県内を北東から南西に走る布田川・日奈久(ふたがわ・ひなぐ)断層帯のうちの日奈久断層帯の高野―白旗区間がずれて起きたとしました。
“どこでも”
同区間の長さは熊本県益城(ましき)町から宇城(うき)市にかけての約16キロです。しかし、16日のM7・3の地震の震源は宇土(うと)半島(宇土市)に向かって延びる布田川断層に沿った場所です。
地震調査委員会委員長の平田直・東京大学教授は15日夕に開いた記者会見で、(高野―白旗区間)に限らず、九州の中部に近いところは活断層が多く、地下構造の不均質な度合いが強く活発な地震活動が続いていると説明。14日のM6・5の地震に限らず、どこでも起こりうると指摘していました。
北東方向へ
16日未明には同県阿蘇地方で震度6強、朝には大分県中部で震度5弱の地震が起きるなど範囲が広がりました。政府の地震調査研究推進本部が2013年にまとめた九州地域の活断層の長期評価では、日本列島の形成過程で生じた地質構造による「大分―熊本構造線」沿いに、断層帯が分布すると指摘していました。地震はこの範囲で北東方向に続発しています。
地震は布田川断層帯の北東延長線上へ続き、阿蘇地方では午前3時台にM5・8の地震が2回起き、最大震度5強と6強を観測。さらに大分県中部の別府―万年山(はねやま)断層帯付近では午前7時11分、M5・3で最大震度5弱の地震が起きました。
東洋大学の渡辺満久教授(変動地形学)は「阿蘇で発生した地震は地上では断層が見えないが、地下に埋もれている可能性がある」との見方を示しました。日奈久断層帯のうち、熊本県芦北町や水俣市沿岸付近に至る南部については「いつ、どういう形で動くか分からないが懸念される」と話しました。
一方、気象庁の青木元・地震津波監視課長は、熊本地方と阿蘇地方、大分県の3カ所で、別々の地震が発生していると述べ、16日午前1時25分に熊本地方で発生したM7・3の地震がきっかけになった可能性があるとの見方を示しました。
「前震→本震」難しい予測
気象庁は16日、熊本地方で相次いでいる地震について、同日午前1時25分ごろ起こったマグニチュード(M)7・3の地震が本震で14日のM6・5の地震は前震だったと考えていることを明らかにしました。前震は大きな地震(本震)の前に起こる地震のことですが、その後により大きな地震(本震)が起こると予測することは困難とされています。
東日本大震災を引き起こしたM9・0の東北地方太平洋沖地震の場合も、本震の2日前の2011年3月9日に三陸沖の本震の震源から約50キロ北東を震源とするM7・3の地震が発生し、宮城県栗原市などで最大震度5弱の揺れを観測しただけでなく津波も観測。10日にもその近くでM6・8の地震が発生していましたが、それが前震だったとする見方が示されたのは本震が起こった後でした。
16日未明の地震最大1.8メートルのズレ
筑波大学の八木勇治准教授たちは16日、同日未明に熊本県熊本地方で発生したマグニチュード(M)7・3の地震について解析結果を公表しました。それによると、布田川断層帯で地震が発生したように見えるといいます。
幅20キロ、長さ50キロの断層面が、約20秒かけて最大1・8メートルずれたとみられるとしています。
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新潟県中越地震に次ぐ余震のペース
気象庁は16日、余震発生ペースが急上昇し、阪神大震災以後の内陸・沿岸で発生した地震のなかで、2004年新潟県中越地震に次ぐ2番目のハイペースとなっていることを明らかにしました。
気象庁の担当者は「規模の大きい地震が複数回発生したことで、余震が増えたのだろう」と話しています。
別府―万年山(はねやま)断層帯 大分県東部の別府湾の海底から大分県西部にかけて東西方向に多数の断層で構成される活断層帯。東端は中央構造線断層帯に連続する可能性があり、両断層帯の関係が検討課題。分布地域は由布岳など活火山が位置し、火山活動とも密接な関係があると考えられています。今後30年間の地震発生確率は最大4%とされ、国内の活断層の中で「高いグループ」に属すとされています。
布田川(ふたがわ)断層帯 阿蘇外輪山の西側斜面から宇土(うと)半島先端まで延び、長さ約64キロ以上。2013年までの評価で今後30年間の地震発生確率は最大0・9%。活動時はM7・5〜7・8程度以上の地震が起きる可能性があるとされています。
日奈久(ひなぐ)断層帯 北端で布田川断層帯と接し、八代海南部に至り、長さは約81キロ。14日午後9時26分ごろに起きた震度7の地震は、この断層帯のうち益城町から宇城市までの長さ16キロの区間がずれて起きたとされています。両断層帯全体が活動する場合にはM7・8程度の地震が発生する可能性があるとされています。
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