2016年4月12日(火)
国会決議違反のTPPは撤回を
NHK日曜討論 小池政策委員長が発言
10日放送
日本共産党の小池晃副委員長・政策委員長は10日放送の「NHK日曜討論」で、各党の政策責任者らと環太平洋連携協定(TPP)や経済政策について議論しました。
交渉過程を隠蔽
番組では、政府がTPP交渉過程について一切の情報を「黒塗り」した資料しか示さない一方、衆院TPP特別委員会の西川公也委員長が出版を予定していた著書の「ゲラ刷り」に交渉過程が記載されている問題が議論になりました。自民党の小野寺五典政調会長代理は「条約の交渉過程は、ほかの条約でも外に出していない。手の内を出すことになる」と「黒塗り」を当然視。民進党の山尾志桜里政調会長は「公開の物差しは何か。与党に有利か不利かで計られているのでは」と疑問を投げかけました。小池氏は次のように述べました。
小池 黒塗り資料を出しておいて白紙委任しろというのか。本当に無責任だ。TPPのように秘密保持契約を結んだ条約の例はほかにはない。交渉過程の速やかな報告や国民への情報提供を義務づけた国会決議に照らせば、国会と国民にまともに情報公開もできないような協定は国会で審議する土台がないということだ。撤回するしかない。
説明責任ある甘利氏を国会に
司会者からTPP交渉を担当していた甘利明前経済再生担当相の委員会出席を求めるかと問われた小池氏は「当然だ。刑事事件に発展する動きも起こっている。安倍首相も(甘利氏は)きちんと説明をするといい、甘利さん本人も説明するといったが、辞任以降一度も説明していない。国会に出てきて疑惑についても説明する必要があるし、TPPの交渉過程についてもきちんと答えてもらう責任がある」と強調しました。
さらに、甘利氏が当初、コメの輸入額は「5万トンがぎりぎり」と言明しながら、米国から17万5000トンを要求され、7万トンで妥結したと指摘。「どうして譲ったのか。(小野寺氏はTPP交渉について)“個人プレーではない”といったが、会談記録もないという。だとすれば(甘利氏)本人に説明してもらうしかない」と強調しました。
影響試算は「手品」
TPPの経済や農業への影響についての政府の試算について小池氏は、3年前の試算に比べ、国内総生産の押し上げ効果が4倍に増えた一方、農業へのマイナスの影響は25分の1に減るなどの極端な変動に「これは手品だ」と発言しました。試算では、TPP発効で輸入が激増しても、農産物の国内生産量は一切減少せず、食料自給率も低下しないとしているほか、“コメの輸入増加相当分は備蓄用に回すから生産額は減少しない”などと予測していると指摘。自治体が政府の計算方法に沿って試算したところ、青森、福井、熊本などの各県で計52億円も生産減少が起き、千葉県の落花生でも政府は「影響ゼロ」と試算するが、同県は最大3・2億円も減少するとしているとして、次のように述べました。
小池 あまりに納得できない。日本農業新聞の調査では、農業者の8割が過小評価だといっている。政府試算そのものをやり直さなければいけない。
小野寺氏は「国際的に認められているモデル」での試算だと弁明しつつも、指摘された矛盾については一切反論できませんでした。山尾氏は「農産品の関税の約8割が撤廃されれば、輸入量が増えると考えるのが常識だ」と批判しました。
小池氏は「“関税の撤廃はすぐではないから影響は出ない”という計算をしているが、いずれ関税を撤廃する」と指摘。“セーフガードがあるから大丈夫だ”という政府の言い分に対しても、「牛肉など、“とてつもない壊滅的な状況”でなければ発動しないセーフガードだ」「たとえ輸入が増えたとしても自給率は下がらないというなら、日本人が突然みんな大食漢になるというのか」と皮肉り、「“TPPはバラ色だ”と描き出すためにつくり出したフィクションだ」と批判しました。
「TPP断固反対といったことはただの一度もない」という安倍首相のTPP特別委での答弁についても小池氏は、2012年総選挙当時の自民党の北海道比例ブロックの選挙公報を示し、「はっきりと安倍さんの顔写真の横に『TPPを断固阻止する』と書いてある」「国民を愚弄(ぐろう)するものだ」と述べました。
訴訟大国相手に「ISD条項」
農業以外への影響について問われた小池氏は、医療・労働などの非関税障壁撤廃も「大問題だ」と述べた上で、米国企業が他国の政府や自治体に巨額の賠償を求めることができるISD(投資家対国家紛争解決)条項は「非常に深刻だ」と語り、同条項を盛り込んだTPPを「訴訟大国アメリカ」と締結する危険性を強調。北米自由貿易協定を結ぶカナダ政府が米国の製薬会社の薬について「臨床実験が不十分だ」として特許を不承認とした結果、製薬会社から1億ドルの損害賠償を求められた実例を示し、「これを口実に(日本)政府が国民の命や健康を守ることに取り組まなくなる“萎縮効果”が大変心配だ。TPPは輸出入だけではなく国民生活全体に関わる問題だ」と述べました。
アベノミクスの「好循環」回っていない
自民・小野寺氏は、「いろんな弱含みの経済指標」が出ており、「企業の利益・果実が投資・賃金にちゃんと回って初めて経済の好循環が回る」と発言。「好循環」が実現していない実態を認めました。
実質賃金が4年連続マイナスとなったと指摘されて、2月の実質賃金(速報値)は前年同月比プラスになったと強調する小野寺氏に、小池氏は「ひと月だけだ」とたしなめ、次のように述べました。
小池 小野寺さんも経済の好循環は起こっていないと認めた。これではっきりした。結局、世界で企業が一番活躍しやすい国にするといって法人税を減税したが、設備投資にも賃金にも回らず、内部留保は300兆円を超えた。経済の6割を占める家計消費はずっとマイナスが続いている。頼みの大企業の景況感まで悪化し始めた。まさに「アベノミクス不況」になりつつある。
その上で、「アベノミクスはストップ。格差を正して公正な社会にしようと訴えていきたい」と述べ、そのために(1)税金の集め方を変える―消費税率の10%への増税の中止、大企業減税をやめ、増税するなら富裕層に(2)税金の使い方をあらためる―子育て、教育、社会保障に使う(3)働き方を変える―ブラック企業をなくし、最低賃金を思い切って引き上げる――の三つが必要だと主張しました。