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2016年4月9日(土)

栃木・小1殺害に無期懲役

物証乏しく自白信用

地裁判決 被告側は控訴へ

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 2005年に発生した栃木県今市市(現日光市)の小学1年女児、吉田有希ちゃん(当時7歳)殺害事件で、殺人罪に問われた無職の男性被告(33)の裁判員裁判の判決が8日、宇都宮地裁でありました。松原里美裁判長は自白内容が「客観的事実と矛盾せず、信用できる」として求刑通りの無期懲役を言い渡しました。


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(写真)判決後に記者会見する弁護人の一木明弁護士(中央)ら=8日、栃木県宇都宮市

 物証が乏しく、自白を立証の柱に据えた検察側に対し、弁護側は「自白は捜査員による厳しい取り調べと誘導でつくられた」として無罪を主張しました。自白の信用性が最大の争点でした。

 判決後に弁護人の一木明弁護士は記者団に「必ず控訴する。被告本人も意思を固めている」と語りました。

 検察側は、同被告が05年12月に下校中だった女児を拉致して県内の当時の自宅に連れ去り、わいせつ行為をした後に茨城県常陸大宮市の山林で胸部を刺して殺害、遺体を捨てたと主張しました。

 判決要旨は、同被告が遺体発見現場方向に車で往復していることや、行先や目的を公判で具体的に説明していないことなどを挙げ、「被告が犯人である蓋然(がいぜん)性は相当に高い」と説明。しかし「客観的事実のみから被告の犯人性を認定することはできない」としました。その上で、自白の信用性について検討。弁護側が「自白が遺体や現場の状況と矛盾する」と主張した各論点を「不合理とはいえない」などと退けました。

 遺体から被告のDNAが検出されないことについても「わいせつ行為がなかったことを推認させるとは言えない」と判断。自白には「取調官の誘導に合う部分もある」としつつ「体験した者でなければ語ることのできない迫真性に富んだ内容」と結論付けました。

 同被告は事件から8年以上がたった14年2月に商標法違反罪で起訴された直後、身柄を拘束されたまま取り調べに対し女児殺害を自白したとされます。公判では全面的に否認しました。

不完全な“可視化”

弁護団が会見で批判

 栃木女児殺害事件で男性被告(33)への有罪判決を受けて、3人の弁護人は閉廷後、記者会見を行いました。

 一木明弁護士は「一般的に『客観的証拠はウソをつかない。自白で判決を書くことは危険だ』と言われているのに、このような(自白に頼った)判決を書かれたことが一番納得いかない」と批判しました。また、「検察も言っていないことを推測して自白前提の判決となっている」と指摘しました。

 今回の公判では、取り調べの一部を録音・録画した“可視化”映像が法廷で公開され、判決に大きな影響を与えました。

 一木弁護士は「被告は当初、商標法違反事件の身柄拘束を利用して殺人罪の取り調べを受けた。商標法違反ということで、録画のないところで強要や暴力がなされた。そこで十分、被告の人格を支配して“自白”させた後に、録画できる場所に連れてきて同じことを繰り返させた」と指摘しました。

 「国会で刑訴法等改定案が問題になっているが、取り調べが全面的に録画されていればこのような判決にはならなかった」とのべ、一部“可視化”について警鐘を鳴らしました。


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