2016年4月8日(金)

きょうの潮流

　よく１０分の１秒の時間を表すとき、まばたきよりも速いと例えられます。まさに一瞬の出来事。１００分の１秒となれば、もはや人の目では追いつかない世界でしょう▼リオ五輪の代表選考を兼ねた競泳の日本選手権ではそのわずかともいえない差が明暗を分けています。男子平泳ぎの北島康介選手は１００メートルで派遣標準記録に０・３秒届きませんでした。逆に、０秒０６上回って初の五輪切符をつかんだ選手も▼互いの力の差を機械でしか測れない競技もあるトップスポーツの厳しさ。選手たちは日々、目に見えない差を縮め、少しでも広げようと必死に鍛錬しています。彼らのプレーは膨大な時間と努力の積み重ねの結晶です。それを一瞬で水泡に帰してしまうとは▼バドミントン日本男子の有力選手２人が違法な裏カジノに出入りし、バカラ賭博をしていたことがわかりました。ともに認め、活躍が期待されていたリオ五輪の道も絶たれました▼多額の賭け金が動く闇賭博。常習者によると、一瞬で大金をつかんだときの高揚感は自分が人知を超えた存在に思えると。２人が所属するＮＴＴ東日本の一部の部員も出入りを認めたといいますが、日頃の指導の中身が問われます▼賭博問題が続くスポーツ界。誘惑の糸を全体で断ち切らねばならないのに、財源をサッカーくじに頼る本末転倒ぶりです。みずからを律し努力によって道を切り開く、賭博とは最も遠い世界にあるスポーツ。その価値は、一瞬の輝きだけでは測れないものがあるはずです。