2016年4月7日(木)
川内原発停止認めず
不当決定に抗議
福岡高裁支部 支援者ら「私達は屈しない」
稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを周辺住民ら12人が求めた仮処分申し立ての即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部(西川知一郎裁判長)は6日、住民側の申し立てを棄却する決定を出しました。裁判所前につめかけた支援者らは「不当決定」「私達は屈しない」の幕を掲げ、抗議の声をあげました。
|
決定文は、どのようなことが起きても原子炉施設から放射性物質が放出されることのないような安全性を確保することは、「現在の科学技術水準をもってしては不可能」とし、原発の安全性は社会通念を基準とするしかないと断定。「絶対的な安全性に準じる安全性の確保を求めることが社会通念になっていない」として住民側の訴えを退けました。
新規制基準による地震対策は「高度の合理性を有する」とし、火山の噴火による影響について、「想定される原子力災害をはるかに上回るもの」になると認めながら、極めて低頻度としました。住民の避難計画についても住民の人格権が侵害される恐れがあるとはいえないとしました。
同日の会見で「原発なくそう!九州川内訴訟」弁護団の森雅美共同代表は「ある程度の危険性を認めながら、今の状況や原子力規制委員会の新規制基準が社会通念で容認されていると述べている。このような決定は納得できないし、不満を持っている」と述べ、高浜原発の運転を差し止めた大津地裁の決定(3月9日)とは対照的な司法判断に怒りをあらわにしました。
原発なくせの運動に取り組む市民グループは決定を受け、ただちに市内の街頭で「緊急報告集会」を開き、マイクで次つぎと抗議の声をあげました。
川内原発から30キロ圏内の鹿児島県いちき串木野市在住の男性(64)は「避難計画はないに等しいのだから、ただちに原発を停止すべきで、今回の決定は受け入れられない」と発言。宮崎県高原町から九電支社前の抗議行動に参加している男性(72)は「これからの世代を担う子どもたちのことを考えてほしかった。不当な決定に負けてはいられない」と決意を新たにしました。
決定骨子
一、原発の新規制基準は不合理と言えない。
一、噴火の規模や時期の予測は不可能。的確な予測を前提とした原子力規制委員会の火山影響評価ガイドは不合理だ。
一、破局的噴火の可能性に相当な根拠がない限り配慮は不要で、規制委の判断は結論として不合理と言えない。
一、避難計画に問題点があるとしても、住民らの人格権侵害の恐れがあるとは言えない。
解説
安倍政権と電力会社に顔向ける
福岡高裁宮崎支部(西川知一郎裁判長)は、原発の新規制基準について「不合理とはいえない」として、九州電力川内原発1、2号機の運転差し止め請求を退けました。運転を追認する決定です。
決定は新規制基準の一部である火山影響評価ガイドを「不合理である」と指摘するなど住民の主張を部分的に認めています。しかし、「絶対的な安全性に準じる安全性の確保を求めることが社会通念になっていない」などと断定し、原発の安全性は「社会通念を基準として判断するほかない」と述べています。
一方、関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた3月の大津地裁決定はどうか。災害が起こるたびに「想定を超える災害だった」と繰り返された過ちに真摯(しんし)に向き合うなら、危険性を見落とした可能性があるとの立場で、十二分に余裕を持った基準にすることを念頭に新規制基準を策定すべきだとしていました。
さらに大津地裁決定は、「わが国にもたらした災禍は甚大だ」と東京電力福島第1原発事故を直視し、「原因究明が不可欠だ」と事故を繰り返さない立場を強調していました。
国がお墨付きを与えた原発が甚大な事故を起こしたのが福島原発事故です。しかし、高裁宮崎支部の決定は、新規制基準を「不合理ではない」と説明。その上、住民が問題視している避難計画についても「合理性ないし実効性を欠くものであるとしても」、問題はないとしています。
国民の大多数は原発の安全性に不安を持ち、再稼働に反対しています。「社会通念」というなら、そちらにこそ依拠すべきです。高裁支部決定は、国民でなく、原発を推進する安倍政権と電力会社に顔を向けたものです。
(「原発」取材班)