2016年4月5日(火)
主張
「後期医療」保険料
高齢者の生活をどこまで壊す
75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度の保険料が4月から改定されました。年金天引きなどされる保険料は全国平均で年6万7904円となり、増額傾向が続いています。一人ひとりの保険料は所得などによって異なりますが、消費税増税や生活必需品の値上げなどで年金額が目減りするなか、高齢者の暮らしに重くのしかかることは明らかです。保険料を払いきれない高齢者も増えています。長生きがつらくなる医療制度を存続させておくことはできません。
引き上げの矛盾は深刻
約1600万人が加入する後期高齢者医療制度は2008年、自民・公明政権が社会保障費削減を狙った「構造改革路線」の柱の一つとして導入しました。75歳になった人が、それまで加入していた国民健康保険などから切り離され、「後期」という別枠の制度に囲い込まれ、負担増などが迫られる“年齢差別”の仕組みです。
2年に1度改定される保険料は、都道府県ごとで運営される後期高齢者医療広域連合で決定されています。今回16〜17年度の改定は、制度導入後4回目ですが、上昇に歯止めはかかりません。高齢者の声と運動を背景に、23の広域連合は、積み立てている基金を取り崩し、保険料を下げましたが、24は引き上げました。
病気になりがちで、医療費がかかることが避けられない75歳以上を一つの制度にまとめ、高齢者人口が増えるたびに加入高齢者の負担割合を増加させる仕組み自体がもたらす重大な弊害です。厚生労働省幹部が導入時に述べたように“医療費が上がる痛みを高齢者に直接感じてもらう”制度であることが、いよいよ浮き彫りです。
保険料を払いきれない高齢者が約24万人にのぼり、正規の保険証を交付されないケースが増えていることは深刻です。有効期間が短い短期証に切り替えられた高齢者は約2万5千人に達します。長い治療を必要とするお年寄りが、安定的に医療にかかれない事態は、健康と命にかかわる大問題です。
保険料「滞納者」に対する預貯金などの差し押さえが激増していることも重大です。差し押さえられた高齢者は約4600人にのぼります(14年)。4年前の2・5倍以上です。年金まで差し押さえられた例もあります。75歳を超えた人たちの生活実態を無視した、非情な差し押さえは許されません。
現役世代の負担増も重大です。
「メタボ健診」の受診率の低い健保組合などには、「後期」制度に支払う支援金が増額される“ペナルティー”まであります。
矛盾と問題だらけの後期高齢者医療制度は廃止し、以前の老人保健制度に戻すべきです。
「軽減廃止」の逆行やめよ
「後期」保険料がこれだけ暮らしを圧迫しているのに、安倍晋三政権は17年度から「保険料軽減措置」の段階的廃止を強行しようとしています。加入者の半数以上約860万人の暮らしを直撃する、制度発足以来最大の負担増です。「下流老人」「老後破産」が人ごとでなくなり、老後不安を抱える国民が増加するなか、高齢者を追い詰める逆行はやめるべきです。
高齢者を大切にしない政治が現役・子ども世代の未来を保障できるはずがありません。全世代が力合わせ安倍政権の社会保障破壊をストップさせることが必要です。