2016年4月3日(日)
障害者総合支援法改定案
「財源」理由に給付抑制も
「基本合意」踏まえ 願いに沿うものに
安倍政権は、障害者総合支援法「改正」法案を国会に提出しました。同法案は、昨年末に厚生労働省の社会保障審議会・障害者部会がまとめた報告書を踏まえてつくられたもの。報告書は、「財源確保」を理由に給付抑制の方向を示しています。(岩井亜紀)
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「法案概要をみると、運動で求めてきた項目もあがっています。一方、対象者が障害の程度で限定されたり、給付削減の誘導につながるものがあるなど利用者を分断する内容になっています」
こう指摘するのは、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の白沢仁事務局長です。「法成立後に、300もの政省令で具体的な支援内容や対象者は決まるので、法案だけでは全体の危険性がはっきりしない部分もある」
軽度者追い出し
法案概要は、地域生活の支援として、新たに「自立生活援助」サービスを示しています。障害者支援施設やグループホームなどを現在利用していて一人暮らしを希望する人を対象に、巡回訪問などをするというもの。新サービスを提供するかわりに、グループホームに住んでいる軽度者を追い出す懸念があります。
障害者部会の報告書は、「自立生活援助」と併せて、グループホームによる重度障害者への対応強化を示し、グループホームを重度者の地域生活の「受け皿」としています。「自立生活援助」の対象として、すでに一人暮らしをしていて巡回支援が必要な人は想定されていません。
入院中の障害者への付き添い介助はこれまで認められませんでした。関係者らは長年、認めるよう要求してきました。視覚障害があり一人での移動が困難な人や、重度の知的障害のため慣れた介助者の助けが必要な人などのニーズが高いのです。長時間生活介助や身体介助を行う「重度訪問介護」を利用する重度障害者は、入院中の医療機関内で介助者の支援を得られるようになります。しかし、その中でも最重度の人だけが対象になります。支援内容も、医療従事者に介助内容を伝える程度のものに限定しています。
介護保険を優先
総合支援法は、障害者が65歳で障害福祉サービスから介護保険サービスの利用へ移行するとしています(介護保険優先原則)。低所得の障害者は障害福祉サービスを無料で利用していますが、介護保険サービスでは原則1割の自己負担が発生。移行で、サービス提供の内容や時間も制限される事態が全国に広がり問題化、多くの障害者は介護保険優先原則の廃止を求めています。
法案概要は、長期間障害福祉サービスを利用してきた低所得の人の利用料負担軽減の仕組みを設けるとしています。介護保険優先原則を堅持し、介護保険サービスの利用が前提の見直しです。負担軽減も障害の程度で限定する方向です。
白沢さんは「そもそも今回の法『改正』は、障害者自立支援法にかわり総合支援法を制定したときに多くの障害者が“約束と違う”“私たちの願いに反する”と声を上げ、検討規定がついたもの。根本的見直しに向け、当事者の声を反映させるべきだ」と指摘します。
障害者自立支援法違憲訴訟で和解時に国と訴訟団は、介護保険優先原則の廃止などを盛り込んだ「基本合意」を結びました。
「法案は『基本合意』や障害者権利条約などを踏まえた内容にすべきです」と白沢さんは強調。「障害者の基本的人権を保障する見直しを求めて運動を大きく広げていこう」と呼びかけます。