2016年4月3日(日)
立憲主義破壊と「政治改革」
風頼み当選で劣化・単色化
自民関係者“嘆き節”
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「2014年までに小選挙区制での総選挙も7回行われた。古い時代の政治家はほとんどいなくなり、公募で議員を集めるようになった。しかしこれは、人材不足の象徴だ。集まる若い議員には、下積み経験も理想もない。ただ議員になりたいだけ」
自民党関係者の一人はこう述べ、同党議員の質の深刻な劣化を嘆きます。
相次ぐ暴言・失態
育児休業宣言の一方で妻の妊娠中の不倫が発覚して議員辞職した宮崎謙介氏(京都3区)、北海道の一部である「歯舞(はぼまい)諸島」の読み方がわからなかった島尻安伊子沖縄北方担当相。閣僚、自民党議員の暴言・失態が止まりません。
「風頼みで当選した1、2回生だけで130人以上いる。『安倍チルドレン』は本当に質が低い」。関係者は自嘲気味に語ります。「政治改革の議論の中で『小選挙区制を導入したら、こんな問題が起きてくるだろう』と言われていたことが、やっぱり起きてしまった」
自民党のベテラン議員は「小選挙区制は公認権が執行部に集中する。公募で執行部に認められれば、時の政権の人気だけで議員になれてしまう。だから不倫問題で辞任した宮崎氏のような人物まで国会議員になってしまうのだ」と話します。
公認権・人事権と財政権の党執行部への集中のもと、執行部に対する批判がほとんど出なくなっています。関係者は「議員の質の劣化とモノカラー(単色)化は一体」と言います。
昨年、詐欺まがいの資産運用の疑惑で自民党を離党した武藤貴也衆院議員は、戦争法案の審議の中で、同法案に反対する学生に対し、「戦争に行きたくない」という主張は「極端な利己的考え」だと攻撃。「利己的個人主義がここまで蔓延(まんえん)したのは戦後教育のせいだ」と述べました。安倍晋三首相を「支援」する改憲・右翼団体「日本会議」の主張そのものです。
党内の議論なし
自民党は、戦争法に対して憲法学者の9割以上、歴代内閣法制局長官や最高裁元判事、日本弁護士連合会など「全法曹」から違憲との批判を受けても、まともに受け止める幅と柔軟さ、冷静さを失っています。
権限集中を強める自民党執行部ですが官邸との関係では、「自民党幹事長もかつてのような強い権限はない。自民1強というより、いまや官邸1強だ」(関係者)。
自民党幹事長を務めた山崎拓、野中広務、古賀誠各氏は、昨年夏、戦争法案批判の積極的論陣を張りました。しかし、現役の自民党議員からの批判はほとんど皆無でした。
河野洋平・元自民党総裁は昨年10月、戦争法の成立を受け、日本外国特派員協会での講演でこう述べました。
「これまで自民党は、相当多様な人材が党内で十分議論することができた。最近心配なのは、党内に十分な議論がない。(このままでは)支持はだんだん少なくなっていく」(中祖寅一、前野哲郎)