2016年4月3日(日)
TPPのISDS(投資家対国家紛争)解決条項
自治体が不利益被る
「遺伝子組み換え表示」など提訴も
後半国会の焦点になる環太平洋連携協定(TPP)問題で、大きな懸念として浮かび上がっているのが、企業が国を訴えることのできるISDS(投資家対国家紛争解決)条項です。国や都道府県、政令指定都市の行政や公共事業にも不利益を与える可能性があります。
「米国企業などに対する海外市場でのいっさいの差別と不利益を認めないことが、TPPの大原則です。『遺伝子組み換えでない』という食品表示なども、TPP条文に規定されていなくてもISDS条項で提訴される危険性を忘れてはなりません」。鈴木宣弘東京大学大学院教授(農業経済学)はいいます。
たとえば、政令市の学校給食で国産・地元産の食材を確保しているところが多くありますが、これを米国企業への差別だといってくることがありえます。
実際、韓国のソウル市では学校給食条例で遺伝子組み換えでないものを使うとなっていましたが、米韓FTA(自由貿易協定、2012年韓国で発効)により、米国企業から訴訟に持ち込まれたら負けるし訴訟費用も高いというので、同市は前もって条例を変更してしまいました。
韓国では食料にかぎらず米国産を「差別」する可能性が指摘され、数多くの地方自治体レベルの条例を「自主的に」廃止・修正することになりました。
米国ではTPPは連邦法にしか影響しないので、州法による公共事業の国産義務づけは影響を受けません。
一方、日本ではTPPにより国の公共事業だけでなく、県・政令市の事業も国際入札にかける、入札のさい地元の業者を優先することを「差別」だと訴えられる可能性があり、地方の雇用にも影響を与えることになります。