2016年4月2日(土)
“1発の銃弾” 「平穏」射ぬく
陸自 南スーダン宿営地「着弾」展示
政府説明は破綻 戦争法の危険現実に
“1発の銃弾”が安倍政権による戦争法(安保法制)の危うさを浮き彫りにしています。銃弾は、陸上自衛隊福知山駐屯地(京都府福知山市)の史料館に展示されていた、国連平和維持活動(PKO)の南スーダン自衛隊宿営地に着弾したとされる1発の5・45ミリ小銃弾です。小銃弾と同駐屯地から見えてくるのは―。 (山本眞直)
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「あれが史料館ですよ」。駐屯地に詳しい日本共産党の塩見卯太郎福知山市議が目線を向けた先、駐屯地の木立に囲まれてひっそりとたたずむのは黒瓦とモルタル塗り白壁の洋館風の建物です。
福知山駐屯地の第7普通科連隊の前身、旧陸軍歩兵20連隊が1898年に将校集会所として建築。現在の史料館は66年に開設。館内には、歩兵第20連隊など旧軍の関係史料、福知山地方の郷土史料、自衛隊に関する史料などが展示されています。問題の小銃弾はこの自衛隊コーナーに展示されていました。
「自動小銃から」
特殊部隊などを取材している軍事ジャーナリストは、報道された展示小銃弾写真を見てこう指摘します。
「自動小銃から発射された線条痕(ライフルの溝のあと)がきれいに残っている。数百メートル先から撃たれ、やわらかい地面に落下したようだ」
「日本隊宿営地」は南スーダンの首都・ジュバの広大な国連施設内にあります。この日本隊宿営地に「着弾した」のは展示標記によれば「2013・12・16」です。第5次隊として福知山駐屯地の部隊が前任部隊と引き継ぎ活動を開始したのが13年12月15日。この日の深夜から「反政府勢力の騒乱の発生」で、国連施設には避難民が大量に流入していました。
16日午前1時すぎには、政府軍と反政府軍の武力衝突が発生しています。
このため第5次隊は長期にわたって国連施設から外部には出られず、施設内での活動を余儀なくされました。
第5次隊の井川賢一隊長(1佐)は、同時期に内戦状態の南スーダンに駐留した韓国軍に1万発の銃弾を提供。隊員には「『正当防衛や緊急避難に該当する場合は命を守るために撃て』と異例の射撃許可を出した」(「産経」14年6月28日付)と報じられています。
福知山駐屯地の監視行動を続ける福知山平和委員会の足立直元代表は「着弾」展示をこう見ています。
「殺し殺される」
「史料館には旧陸軍歩兵20連隊の史料が展示されているが、この部隊は南京攻略(虐殺)で一番乗りしている。イラク派兵で一番乗りした佐藤正久イラク復興業務支援隊長(現自民党参院議員)は帰国後、福知山駐屯地司令と第7普通科連隊長を兼務していた。彼はイラクで『駆けつけ警護を考えていた』という好戦主義者。“20歩兵連隊の伝統、気風を受け継げ”と隊員に訓示してきた。そうしたDNA(遺伝子)を受け継ぐ福知山駐屯地部隊が、『着弾』は戦場からの戦利品として持ち帰ったのではないか」
「着弾」は、「(現地は)平穏」とする政府の説明が破綻し、自衛隊員が「殺し、殺される」事態が現実化する危険性をまざまざと浮き彫りにしました。
同平和委員会の水谷徳夫さん(66)はこう力を込めます。
「戦争法が強行される以前から事実上の『戦場』に自衛隊員が行かされていることを広く市民に伝え、戦争法廃止につなげたい」