2016年4月2日(土)
主張
プルトニウム累増
使うあてのない再処理中止を
原子力発電所を運転すると、高い放射能を出す使用済みの核燃料がたまり続け、その管理が大問題になります。政府や電力会社は、使用済みの核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再び燃料として使う「核燃料サイクル」を目指してきましたが、青森・六ケ所村の再処理工場は稼働できず、プルトニウムを燃やす高速増殖炉は実用化のめどさえ立ちません。イギリスやフランスに再処理を委託し、プルトニウムをウランと混ぜて燃やす、安全性が不安な「プルサーマル」を進めていますが、原発が停止するなか、危険なプルトニウムはたまり続ける一方です。
原爆の材料にもなりうる
プルトニウムは自然界には存在せず、猛毒で、高い放射能を発生し、使い方によっては原爆の材料にもなる危険な物質です。かつて広島に投下された原爆はウラン型でしたが、長崎に投下された原爆はプルトニウム型でした。国際社会はプルトニウムの管理を厳しく定めており、核不拡散条約(NPT)などの国際取り決めや国際原子力機関(IAEA)、ワシントンで開催中の核セキュリティ・サミットなどでも、「利用目的のないプルトニウムは持たない」が厳しい条件となっています。核兵器保有国以外で使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理を公式に認められているのも、日本だけです。
日本が保管しているプルトニウムは昨年夏の時点で約47・8トン、そのうち43・1トンは「プルサーマル」用の「MOX燃料」に使うとされており、残り4・7トンは原子力研究開発機構などの研究用となっています。原子力研究開発機構はそのうち純度が高い331キロを最近提供元のアメリカに返還しましたが、それだけでも原爆40〜50発分に相当するといわれました。
使用済み核燃料の処理の見通しが立たない原発は、「トイレのないマンション」などと批判されてきました。いまでさえ使用済み核燃料が原発内の「燃料プール」などにあふれそうになっています。それなのに政府は、見通しもない「核燃料サイクル」に固執し、海外に再処理の委託を続けています。そのため危険なプルトニウムが国内に大量に蓄積されているのは、極めて深刻な問題です。
政府の原子力委員会が3月末に公表した資料でも、「プルサーマル」の立ち遅れなどから、電気事業者におけるプルトニウム利用計画を改訂・公表できる状況にないとしています。プルトニウムの利用の見通しもないのに、原発の運転や再処理の委託を続け、「使うあて」のないプルトニウムを蓄え続けるのは無謀なだけで、国際的にも通用するものではありません。
世界から再処理中止の声
日本がこのまま「使うあて」もないのにプルトニウムをため込み続ければ、国際的な信用も失いかねません。たとえば日本はアメリカとの原子力協定で再処理を認めてもらっていますが、最近そのアメリカからも、日本は「再処理の軛(くびき)にとらわれている」として、プルトニウム利用の見通しが立たない以上、再処理を中止すべきだとの声が出ています。
増え続けるプルトニウム問題を根本から解決するには、「核燃料サイクル」から撤退するとともに、根本的には原発依存を改め、「原発ゼロ」に進むことが不可欠です。