2016年3月25日(金)
きょうの潮流
権力が集中する帝国型の首都ではなく、各国を緩やかに結びつけるネットワーク型の首都をめざすべきだ。摩天楼のような巨大な本部ビルではなく、街と融和したつましい建物にするべし▼十数年前、ブリュッセルに本部を置く欧州連合(EU)の各機関を整備し直したときのこと。意見を求められた賢人たちはそう答申しました。多様性の統一を掲げるEUを象徴する街に。小国ベルギーの首都はEUの首都として発展してきました▼欧州統合のシンボルがテロに狙われました。標的の一つとなった地下鉄の駅はEUの本部ビル近く。周辺は関連機関の建物が立ち並び、加盟国の閣僚や首脳による会議が毎月のように開催され、外交団や記者が集まります。その規模はワシントンを上回ると▼ブリュッセルには軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)の本部もあります。テロによって国際社会を分断し恐怖を植え付けて力を誇示する。過激組織ISの狙いがみえてきます▼世界中でやまない蛮行。いまや過激思想に感化された移民の子孫や若者が「ホームグロウン(自国育ちの)テロリスト」に。これでは、いくらISの支配地域を空爆しても脅威はなくならないでしょう▼そこには宗教や民族差別、貧困や格差が横たわっています。トランプ氏のように難民を敵視し、情報を得るには拷問も、とあおるのは対立と憎しみを助長させるだけです。独仏の大国に挟まれてきたベルギーのモットーは「団結は力を生む」。テロをなくすために、いまこそ。