2016年3月13日(日)
主張
アベノミクス失速
失政続けることが最悪の失政
先週発表された2015年10〜12月期の国内総生産(GDP)の第2次速報値で、前期比0・3%減と、2四半期ぶりにマイナス成長になったことが確定しました。第1次速報より多少改善したというものの、個人消費の落ち込みはさらに拡大しています。安倍晋三首相は政権復帰以来「経済再生」を宣伝し、「アベノミクス」の効果があって「日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は良好」といい続けてきました。マイナス成長は「アベノミクス」の失敗を浮き彫りにしています。「アベノミクス」は中止すべきであり、失政を続けることこそ最悪の失政です。
好循環どころか悪循環
「アベノミクス破綻」「アベノミクス失敗」―最近の月刊誌や週刊誌がいっせいに掲げている見出しです。安倍政権は「アベノミクス」で、「3本の矢」「新3本の矢」などの政策を矢継ぎ早に繰り出し、円安や株高にすれば企業のもうけが増え、雇用や賃金も回復して、消費が拡大すると宣伝してきました。一昨年4月には消費税を増税しましたが、その影響も短期間で収まると主張してきました。
ところが大企業のもうけは増えても賃金や雇用は改善せず、消費の低迷は長引いて、GDPはマイナス成長です。「アベノミクス」の「破綻」や「失敗」が批判されるのは当然です。「アベノミクス」はすっかり失速してしまいました。
マスメディアの世論調査でも、国民の「アベノミクス」への見方はますます厳しくなっています。「読売」が2月末発表した「アベノミクス」に関する全国世論調査では、この3年余りの経済政策を「評価しない」が57%で、「評価する」の42%を上回りました。ほぼ同時期の「日経」の調査でも「アベノミクス」を「評価しない」が初めて50%に達し、「評価する」は31%と最低になりました。「読売」や「毎日」が毎月行っている世論調査でも3月は安倍政権の支持率低下があらわになっており、その原因は「経済政策への不満を反映」(「読売」)、「経済不安が影響」(「毎日」)と報道されています。
見過ごせないのは、「アベノミクス」が経済の「好循環」を引き起こすどころか、「悪循環」しかもたらさないことが浮き彫りになっていることです。安倍首相は大企業のもうけが増えれば、雇用や賃金が改善するといいました。しかし、首相が「改善した」という雇用も、安倍首相が政権に復帰する前の12年10〜12月期に比べ昨年同期までに増えたのは賃金の低い非正規雇用の172万人で、正規雇用は23万人も減っています。これでは勤労者世帯の収入も増えず消費も改善しないのは明らかです。
「ワーキングプア」(働く貧困層)の増加や貧困率の上昇など、「アベノミクス」のもとでの貧困と格差の拡大は重大です。暮らしを悪化させ、経済の立ち直りをいよいよ困難にしています。
消費税10%増税の中止を
「アベノミクス」の失敗がこれほど明らかになっているのに、安倍首相が失政の責任を認めず、来年4月からの消費税率の10%への引き上げや年金・介護など社会保障の切り下げ、労働法制の改悪など悪政を続けているのは、文字通り失政に失政を重ねるものです。
「アベノミクス」を中止すること、とりわけ消費低迷を招く消費税増税の断念が必要不可欠です。