2016年3月5日(土)
高校生の政治活動 「許可・届出」制の導入指示
愛媛県教委 校則の“ひな型”
愛媛県高等学校教員組合 人権侵害と批判
愛媛県の公立高校でこのほど、生徒がデモや集会などの政治活動に参加する際に、「許可・届出」制を導入するなどの校則改訂の動きがあることがわかりました。愛媛県教育委員会(県教委)が校則の“ひな型”まで示して、各学校長に改訂を指示していました。 (野村説)
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県教委は2015年12月1日、県内の公立高校59校(分校、特別支援学校などを含む)の教頭らを招集し、校則改訂のひな型となる文書「政治的活動等に対する生徒指導に関する校則等の見直しについて」(写真)を配布しました。
そこでは、海外旅行やキャンプ・登山等に行く場合と同様に、「選挙運動や政治的活動への参加」の場合にも「許可・届出」が必要だとし、「1週間前に保護者の許可を得て担任に届け出る」「18歳未満である場合には許可されない」「校内での選挙運動や政治的活動については、原則禁止」と付け加えています。
この文書の末尾には、「以上のとおり、改訂いたしました」との文言がすでに印字されており、学校長が署名・押印すれば、そのまま県教委への提出文書となる形態をとっています。
県教委は12月末日までに県内のすべての公立高校に対して校則改訂を求めており、松山市内のある公立高校では、これを受け「校外での選挙運動や政治活動については許可・届出を要する」などと、県教委が示した様式をそのまま引用した形で校則改訂を済ませています。
文科省は、1月29日に配布した高校生の「政治的教養の教育と政治的活動等についてQ&A」のなかで、休日や放課後に校外での政治活動に参加する場合、学校への届け出制の導入を禁止しない方針を示していることから、今後、愛媛県と同様の事例が他の自治体からも出てくることが危惧されます。
他方で、宮城、愛知の各県や大阪府、仙台市、堺市などの自治体では、「保護者の理解のもと、生徒が自主的に判断すれば良い」などとして、政治参加に関わる学校への届け出は「不要」との態度をとっています。
愛媛県教育委員会は、届け出制の導入について「各学校で判断」との姿勢を示しており、校則改訂についても事実確認を拒否しています。
愛媛県高等学校教員組合は昨年末、県教委に提出した要請書の中で、「県教委はかつて『演劇部の対外活動』や『生徒会の交流』の全面禁止などを学校長に命じておきながら、表向きは『学校長の自主的な判断』だと表明していた」と指摘。「選挙権の有無にかかわらず、すべての高校生には、基本的人権として言論や政治活動の自由が保障されるべきであり、これは学校の教育権への乱暴な介入だ」と批判しています。
内心の自由を脅かす
日本共産党の大平喜信衆院議員の話 「選挙権年齢を引き下げておいて政治活動をするなって意味が分かりません。政府は私たちに投票に行かせたくないの?」―。これは先日、ある高校生から寄せられた声です。
文科省は昨年10月、高校生の政治活動を制限・禁止するという新たな通知を出しました。届け出制はこの通知を具体化したものです。実施されれば、「いつ、どこで、何に」と、学校に主催者なども含めて伝えることが強要され、高校生の内心の自由が根本から脅かされます。
人間は生まれたときから主権者であり、憲法や子どもの権利条約で、すべての国民に政治活動の自由、意見表明権が認められています。高校生だけがこのような制限を受けるいわれは一切ありません。届け出制とともに、高校生の政治活動を制限・禁止するという文科省通知はただちに撤回させる必要があります。