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2016年2月26日(金)

2016焦点・論点

介護・医療・子どもの貧困を考える

立教大学コミュニティ福祉学部教授(社会保障論) 芝田英昭さん

介護疲れ殺人・未遂8日に1回 無保険で50万人受診できず

大企業負担で社会保障充実を

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 介護・医療・子どもをめぐる貧困の現状と打開の方向について、立教大学コミュニティ福祉学部の芝田英昭教授(社会保障論)に聞きました。(内藤真己子)


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(写真)しばた・ひであき 1958年福井県生まれ。立命館大学産業社会学部教授を経て2009年から現職。『安倍政権の医療・介護戦略を問う』、『基礎から学ぶ社会保障』など著書多数。

 ――介護をめぐる事件が連日のようにニュースになっています。

 家族が介護疲れから殺人にいたる事件は、警察庁が統計をとりはじめた2007年から2014年の間に未遂も含め373件起きています。年平均46件、8日に1回の割合です。介護を苦にした自殺・無理心中は同じ8年間で2272人にも上ります。介護のため家族が仕事をやめる「介護離職」は年約10万人で推移しており、企業活動の妨げにまでなっています。

 ――なぜこんな事件が起こるのでしょう。

 介護保険は、要支援・要介護認定者約615万人のうち、半分以上が在宅介護サービスの利用者です。介護保険は「介護の社会化」をうたって創設されましたが実際は、家族介護を前提に設計されています。

 要介護度ごとにサービス上限が定められ、上限を超えれば全額自費負担です。ある介護家族がフルタイムで働くため、認知症の親を週6日デイサービスに通わせ、ショートステイも利用したら1割負担と自費で月十数万円かかったと言います。

 利用料の1、2割負担には軽減措置がなく利用を抑制しています。要介護認定を受けた人の2割がサービスを利用していません。

 施設サービスが足りず特養ホームは52万人が待機。介護に疲れ切っている家族は「預かってくれるだけでもありがたい」という心境になり、劣悪な条件の「お泊まりデイ」や「無届け介護ハウス」が増えているのです。

世界の流れに背

 ――介護保険制度の改悪もありました。

 歴代政府は、介護サービス削減と負担増を国民に押し付けてきました。介護報酬を引き下げて職員の労働条件を悪化させ、人材不足を招きました。

 安倍内閣は一昨年成立させた「医療・介護総合法」で、要支援1、2の訪問介護と通所介護を保険給付から外し自治体事業に移しました。同事業では無資格者やボランティアが担い手となります。さらに要介護1、2のサービスを保険から外す改悪に着手し、来年の通常国会に法案を提出しようと計画しています。軽度者が専門的なケアを受けられなくなると重度化が一気に進み、保険給付費はかえって増加するでしょう。

 一方、諸外国は逆の動きをしています。日本がお手本にしたドイツの介護保険は中重度者が対象の3段階でしたが、2017年から軽度者に拡大する法律が成立しました。韓国も中重度以上の3段階だったのが、すでに昨年から軽度者を含む5段階に広げています。安倍政権はこうした諸外国の流れに背を向け、中・重度に特化しようとしています。

 ――医療では無保険者の増大が深刻です。

 全日本民医連加盟の医療機関だけでもここ数年、年50〜60人が医者にかかれず手遅れで亡くなっています。国立社会保障・人口問題研究所の「生活と支え合いに関する調査」(2013年)では、「過去1年間に必要な医療機関受診ができなかった」人が14・2%います。このうち「公的医療保険に加入しておらず、医療費の支払いができなかった」ためは世代平均2・8%。人口に当てはめれば、概算で50万人が無保険のために必要な受診ができていないことになります。

 国民健康保険料(税)の滞納は336万世帯。窓口10割負担となる資格証や期間の短い短期証の人は計125万世帯にのぼります。背景に労働者の4割に及ぶ非正規労働者の拡大があります。

 日本の場合、非正規労働者のほとんどが社会保険に入れていません。本来、厚生年金の加入資格があるにもかかわらず、国民年金に加入している人は約200万人います。健康保険も同様の状態にあると考えられ、国保世帯の35%が非正規労働者など被用者です。

 国保料は事業主負担がなく高いので払えない。まして国保料を払えない人の多くは国民年金保険料も払えていません。このままでは将来、大量の無年金者が生まれてしまいます。日本の国民皆保険・皆年金制度は底が抜けています。社会保障の充実のためにも、非正規労働から正規労働への転換を図ることが欠かせません。

子の医療無料に

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(写真)廊下に出て朝食の時間を待つ特養ホーム入所者=大阪市城東区

 ――子どもの貧困も大きな問題ですね。

 6人に1人の子どもが貧困状態にあり、一人親世帯では5割を超えています。多くの先進諸国ではありえないことです。日本の将来が危機的状況に陥ります。打開のためには、子ども医療費を自治体任せでなく、国の責任で無料化することが重要だと思います。

 日本が郵政民営化など規制緩和のお手本としたニュージーランドでは、昨年7月から13歳未満の子ども医療費を国の制度として無料化に踏み切っています。子どもの貧困率は日本が16・3%(2012年)にたいし、ニュージーランドでは13・3%(09年)。行革と規制緩和路線が失敗し、若者の貧困と自殺が社会問題になって部分的に手直しをしているのです。

 ――安倍内閣はいっそう社会保障を削る計画です。

 安倍政権は国民生活を犠牲にして「戦争する国」へ突き進もうとしています。来年度予算案では軍事費が5兆円を超えましたが、軍拡で軍事産業をもうけさせようとしている。そのために社会保障改悪で毎年5000億円程度削減する計画です。医療や介護の負担増と給付削減、年金額の削減や支給開始年齢の先送りなどが目白押しです。これらが労働力の再生産すらままならないような、貧困と格差の拡大をもたらすことは明らかです。

 日本共産党が「貧困大国」からの脱却を言っていますが、社会保障削減から充実への転換が必要です。300兆円の内部留保をもつ大企業への法人税減税をやめ、大企業や大金持ちに応分の税負担をもとめる。ヨーロッパ諸国なみに社会保障の事業主負担を増やせば財源はあります。


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